ライフ

漫画家・浅野いにお「当時の『ソラニン』には共感できない」

続編では「時代感を感じて欲しい」と語る浅野氏

『おやすみプンプン』などのヒット作で知られる漫画家の浅野いにお氏。その原点とも言える作品『ソラニン』の最新話が連載終了から11年の時を経て、この10月末に発売された『ソラニン 新装版』に収録され、発表された。浅野氏は何を想い、このタイミングで続編を描いたのか──。浅野氏自身が、その背景を語った。

「もともと、『ソラニン』の連載が終了したときに、後日談はこうなるんだろうなというイメージはあったんです。ただ、それを描けずにいた。今回、たまたま自分が出したかった大判で新装版を出せることになって、それを機に10年経った世界を描いてみることにしたんです」(浅野氏。以下同)

『ソラニン』は、社会人2年目の「井上芽衣子」と、彼女と同棲してバンド活動をしている「種田成男」の小さな恋を描いた物語。2010年には宮崎あおい主演で映画化された。浅野氏自身、新しい話を描くに当たって、『ソラニン』と久しぶりに向き合うことになった。その中で感じたことは、意外にも「作品と自分との距離の遠さ」だったという。連載当時はまだ26歳。37歳になったいま、その世界はどう映ったのか。

「もう、そもそも記憶がセピア色の世界になっちゃってて(笑い)。執筆期間は9か月間だったんです。でも、単行本が動き始めて、作品を評価してもらうようになったのは30歳くらいになってからで。ソラニンについては、常に思い出話を話しているような感覚で、それが嫌だったんです。

 描いていた当時は、自分も漫画家一本でやっているけるか不安で、でもがむしゃらで。その熱みたいなものを、そのままぶつけてた。でも、いまは10年以上漫画家としてやってこれて、状況も生活も違う。冷たい言い方ですけど、昔のことはもう別のことで、共感できなくなっていたんです」

 そのため、自身初のヒット作である『ソラニン』をいい加減断ち切らなければ、との想いがあった。その距離感は物語にも反映されている。当時25歳だったキャラクターたちも浅野氏と同様の月日を重ねている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

伊藤沙莉は商店街でも顔を知られた人物だったという(写真/AFP=時事)
【芸歴20年で掴んだ朝ドラ主演】伊藤沙莉、不遇のバイト時代に都内商店街で見せていた“苦悩の表情”と、そこで覚えた“大人の味”
週刊ポスト
総理といえど有力な対立候補が立てば大きく票を減らしそうな状況(時事通信フォト)
【闇パーティー疑惑に説明ゼロ】岸田文雄・首相、選挙地盤は強固でも“有力対立候補が立てば大きく票を減らしそう”な状況
週刊ポスト
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
伊藤
【『虎に翼』が好発進】伊藤沙莉“父が蒸発して一家離散”からの逆転 演技レッスン未経験での“初めての現場”で遺憾なく才能を発揮
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン