山形大学の研究チームが2014年に米医学誌『American Journal of Hypertension』で発表した研究では、山形県寒河江市の70~72歳の男女210人を1日の血圧変動幅(日内変動)の大きいグループと小さいグループに分けて、MMSE(ミニメンタルステート検査)という国際的な認知症診断テストを実施した。4年間の追跡調査を行なった結果、血圧の変動幅が大きい人ほど認知機能の低下が顕著だったという。
また九州大学大学院の研究グループは今年、米医学誌『Circulation』(8月8日号)で、日ごとの血圧の変動幅(日間変動)が大きい人は、血圧が安定している人に比べ認知症リスクが増すという論文を発表した。
研究対象は、福岡県の大規模疫学調査「久山町研究」に登録されている住民のうち、60歳以上で認知症のない男女1674人。
変動幅を「最も大きい人」から「最も小さい人」まで4段階に分けて、毎朝、家庭で血圧を測定し、2007年から5年間追跡した。その結果、変動幅が最も大きい人のグループは、最も小さい人のグループに比べ、認知症リスクが2.27倍高かった。このリスク上昇は高血圧患者だけでなく、正常血圧の人にも認められた。
認知症は血管性認知症とアルツハイマー型認知症に大別される。同調査では、血管性認知症で血圧の高い人ほど発症リスクが高まったのに対し、アルツハイマー型認知症では血圧レベルにかかわらず、血圧変動幅が大きい人ほど発症リスクが高いという結果が出た。
論文の執筆者の一人である九州大学大学院医学研究院衛生・公衆衛生学分野の二宮利治教授は「現段階では血圧の変動が認知症発症に影響を及ぼすメカニズムは解明されていない」としながらもこう解説する。