これはネットで注文を受けて代理購入した日本の物品を中国に送る行為で、留学生の小遣い稼ぎの定番だ。そこで様々な商品を扱ううち、1体70万円近いラブドールを求める中国の顧客が大勢いることを知った。
「オリエント工業(業界大手)の製品を購入して、クオリティに感動したんです。価格が高くても、美しいものは売れるのだと確信しました」
過去のダッチワイフには風船のようなチープな製品も多かった。だが、1990年代後半に米国でシリコン製の滑らかな肌を持つリアルドールが開発される。やがて日本のオリエント工業が少女タイプの高級ドールを発売して、話題に。2000年代後半には国内で10社近いメーカーが競合し、ファン専門誌が創刊されるほどであった。
同じ東洋人だけに、日本的な「かわいい」ドールは中国人にもウケる。楊氏は26歳になった2009年から起業の下準備をはじめた。
「日本のメーカー、アルテトキオ社のドール造形師に技術指導を受けました。ドールの顔は蝋人形の製作技術を応用しています」
高級ラブドールはシリコン製(安価モデルはポリウレタン製)で、内部に金属の骨格を持つ。ユーザーが「実用」や撮影をする際に、自在なポージングを実現させることが重要だ。
「現代の中国には製造業の技術が蓄積されています。シリコンの肌質はオリエント工業に負けますが、高級モデルの金属骨格はうちのほうが上かもしれません」