性産業、とくにAVや「大人のおもちゃ」といった分野では、日本は世界でも独特なポジションを築いてきた。日本のクールジャパンは、実はこうしたアダルトコンテンツにも支えられていたわけだが、昨今、その構図が崩れてきたという。ソフト戦略を重視し始めた中国共産党の進撃は、凄まじい。ノンフィクションライターの安田峰俊氏がレポートする。
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パソコンに向かう青年たちと、机の上に置かれたロボットのサンプルや雑多な機械類。そんな研究室の一室で、セーラー服姿のコケティッシュな美少女が片膝立ちで微笑んでいた。
透き通るような肌に、あどけない瞳と口元。膝上10cmのスカートから伸びる細い足。白衣の男が親しげに声をかける。
「宝貝、ニーハオ。君に彼氏はいるのかい?」
「面白い質問ね。ふふふ」
表情を動かさない彼女の背後から人工音声が響いた。日本はどんな国、空はなぜ青いの……? 質問を次々と聞き取り、答えていく。
「君は人類をどう思う?」
「みんな敵です。すべてを滅ぼしちゃいますね」
目を丸くした私に、「彼女」の開発元企業CEO・楊東岳氏(34)が笑いかけた。
「びっくりしました? わざとユニークな回答をするようプログラムしておいたんですよ」