その後、詩織さんは警察に被害届を提出。山口氏を準強姦容疑で告発し、裁判所から逮捕状も出た。だが、逮捕当日になり、刑事部長の判断で突然執行が中止に。結果、2016年7月に「嫌疑不十分」として不起訴になった。
これを不服とした彼女は独自に証拠を集め、今年5月、検察審査会に審査を申請。同時に東京・霞が関の司法クラブで会見をし、「レイプは魂の殺人です。レイプという行為は私を内側から殺しました」と訴えた。当時の心境について、詩織さんはこう語る。
「会見前には『リクルートスーツを着るように』との助言もありましたが、普段着の麻のシャツを選びました。『被害者なら白いシャツのボタンを首元まで留めて泣くだろう』という声もありましたが、このようなイメージに当てはまらなければ信じてもらえない。このステレオタイプを打ち壊したかったんです」
一方、山口氏は雑誌『月刊Hanada』12月号に寄せた手記『私を訴えた伊藤詩織さんへ』のなかで、性行為があったことは認めながらもデートレイプドラッグの使用は否定。詩織さんは自らの飲酒で泥酔した後、「大人の女性」として行動したと主張した。この見解について、詩織さんは短く述べる。
「私が確認した事実は、山口氏がこの手記で“私が意図的に隠している”と指摘したことも含めて、すべて本に書きました。これを読んでいただければわかると思います」
山口氏は安倍晋三首相(63才)と親しく、「総理に最も食い込む男」と呼ばれる。
前述の通り、逮捕状を取った警察が当日に山口氏の逮捕を取りやめたことや、当時の刑事部長が自ら逮捕取りやめを指示したことを認めたことを『週刊新潮』が報じたことから、この事件は政治的な側面ばかり注目されるようになった。
だが、詩織さんが素性を明かしてまで訴えたかったのは、シンプルなことだ。
「私は山口氏と闘うつもりはありません。日本の司法、捜査、社会のシステムを問うために会見をしました。この全てがきちんと機能していれば、思い出したくないような話を公然の場ですることはなかったでしょう。このような経験を、妹や周囲の大事な人には絶対にしてほしくなかった。今の仕組みを変えていきたい。それが私の望みです」(詩織さん)
※女性セブン2017年11月23日号