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2017.11.13 20:00  マネーポストWEB

業界初の株式上場、中国ドール企業が開発進める美女ロイドとは?

上半身が可動し、笑顔や憂いの表情を浮かべる受付嬢アンドロイド(EXDOLL社の研究室にて)


「ウチはただの大人のオモチャの製造企業じゃない。いつか中国のイノベーションの力で、笑って喋れる『セクサロイド』を開発していく。世界の歴史を変えてみせますよ」

 中国遼寧省にある大連蒂艾斯科技発展股フン有限公司(EXDOLL社、以下EX社)CEOの楊東岳氏(34)はこう熱弁した。同社は今年8月、中国のベンチャー企業株式市場「新三板」に、なんとラブドール業界では“世界初”の株式上場を果たしてしまった。

 ラブドールは人体の顔や身体を精巧に模した高級ダッチワイフを指す。2001年、日本のオリエント工業が発売したシリコン製の美少女ドールがマニアに熱狂的に支持され、2000年代半ばには10社近いメーカーが競合するブームが起きた。結果、日本の流行に敏感な中国人たちも興味を持った。

「当時の私は日本留学中。代購(ネット注文を受けて日本製品を中国に売る商売)で小遣い稼ぎをしていた。すると高級ラブドールの注文が多く、現物を買った私もファンになったのです」

“彼女”たちを中国でも作りたい。そう考えた楊氏は帰国後、26歳で起業の準備を開始。日本の某ドールメーカーの造形師の技術支援を受け、2011年に自社製商品を市場に送り出した。

 中国では往年の一人っ子政策のもとで「産み分け」をした親が多いこともあり、国民の男女比が極端に不均衡だ。加えて貧富の巨大な格差もあって、結婚できない男性は3000万人以上にのぼる。他方、産児制限の目的からアダルトグッズは「性健康用品」として容認されてきたが、空気人形のような質の悪いダッチワイフが多かった。

 日本水準の造形美を武器に、競争相手なき市場に参入したことで、EX社のラブドールは飛ぶように売れた。現在の同社の従業員数は130人で、約3000km平米の工場を自社で保有。1か月あたり400~800体を出荷する。各商品の価格は2980~2万3800元(約5万1000~41万円)ほど。昨年の年商は、この業界では破格の約1911万元(約3億3000万円)に達した。

「顧客は投資会社の経営者から、母親同伴でドールを買いに来た20歳の男の子まで多種多様。定期的に何体も買っていくリピーターもいて、富裕層が多いですね。いわゆる『モテない男性』とは異なる方も少なくありません」

 こう話すのは、同社幹部の梁静氏(仮名、女性)。顧客の1~2割は若い女性で、コスプレ趣味を持つ人が等身大の着せ替え人形として買うらしい。

 EX社の幹部は楊氏の地元の友人が多く、ほぼ全員が30代以下だ。オタク文化やサイバー文化に目端が利く若者なので、会社の名刺や公式ホームページもIT企業のように垢抜けている。

「仕事に両親の反対は一切なかった。後ろめたいものを作る会社ではなく、かわいい人形作りとハイテク技術が売りの会社だと思っています」(梁氏)

 製品はすでに日本側業者を通じて日本でも販売されている。価格競争力を武器に、オリエント工業をはじめ老舗の国産メーカーすら脅かしつつある。

◆3Dプリンターでアイドルの顔を再現し受付嬢にしたら面白い

「起業当初から、美女のアンドロイドを作るのが夢でした。ついに体制が整ったんです」

 そう話す楊氏のもと、近年のEX社は会話機能を持つAIや、表情や上半身が可動するドールの研究開発を進めている。AI開発の総指揮者には、東北財経大学副教授で中国ロボット協会の副会長・李博陽博士(35)を招く。李博士は早稲田大学で博士号を取得した人工知能学の若き権威だ。

 社内研究室では若者たちがパソコンに向かって3Dデザインを行ない、ロボットのサンプルが散らばる。

「空はなぜ青いの?」
「それは大気中の粒子が……」

 AI会話ドールは、人間の様々な質問を聞き取り的確な返答を返していく。明日の天気、日本について、恋人の有無……。ソフトバンクのAIロボ「ペッパー」と比べると反応は若干遅いが、音声認識機能は良好だ。

「『ペッパー』のAIは素晴らしいですが、外見がいかにもロボット的。うちはラブドール開発で培った造形技術を活かして、より人間的なロボを作りたいのです。現時点で、実用化まで6~7割の開発が終わりました」(楊氏)

 ほか、可動型の美女アンドロイドの試作品は、ウインクしたり微笑んだりお辞儀をしたりできる。最初は成人向け用途ではなく、一般店舗の宣伝ガールとしての売り出しを狙うという。

「将来的には、ドールに可動機能とAIを両方搭載し、3Dプリンターでアイドルの顔を再現して、企業の受付嬢にしたら面白いと思っているんです」

 すでに従業員の女性の顔をモデルにしたコピードールも制作済みだ。

 人件費の高騰で従来の製造業が曲がり角に立つ中国は、2014年からイノベーション立国を標榜。AIをはじめとした新技術に大量の投資資金が流れ込む。EX社の株式上場もアンドロイド開発の資金調達が目的で、すでにベンチャーキャピタルから1000万元(約1億7000万円)以上の投資を受けた。ここで気になるのは美女アンドロイドが日本にやって来るかだが……。

「日本語の会話AIを共同開発するパートナーが見つかれば、ぜひ展開したい。『故郷』の日本に里帰りして、受付嬢として活躍するラブドールの姿をぜひお見せしたいですね」

 チャイニーズ機械美女が「爆来日」する日も近いかもしれない。

■取材・文・撮影/安田峰俊

※週刊ポスト2017年11月17日号

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