「怒りは瞬間的にスイッチが入ります」と語るのは、早稲田大学研究戦略センターの枝川義邦教授だ。
そもそも動物が「怒り」をあらわにするのは、身を守るための行為なのだという。
「脳の『扁桃体』は、五感がキャッチした多くの情報が集まる場所で、好き嫌い、快不快、不安、恐怖、悲しみといったさまざまな強い感情が湧き出るときに働いている。そして、扁桃体がかかわる感情は立ち上がりが早い。感情を向ける対象者が敵の場合、目前の敵から逃げるか、戦うかの判断を早くしないとならないからです。目の前の敵に対するストレス反応ともいえます」
石橋被告は萩山さんを敵と認識し、攻撃に転じたのだろう。だが、本来、怒りは長時間持続することはない。
「人間は怒っているときには交感神経が優位になるので、心拍数や血圧が上がり、呼吸も速くなる。このようなストレス反応は長期間続かないような仕組みが体に備わっています。交感神経とバランスを取るように副交感神経の活動が高くなったり、理性を司る脳の『前頭前野』が活発化し、その怒りにブレーキをかけようとする」(枝川教授)
しかし、近年、石橋被告のように、そのコントロールができない人が増えている。
「寝不足、スマホの使いすぎなどでも前頭前野の機能は低下します。ストレスホルモンである『コルチゾール』の分泌が増えることでも前頭前野の機能は低下することから、ストレスに晒され続けている人は理性のブレーキが利きにくくなり、怒りが爆発しやすくなるのでしょう」(枝川教授)
だが、「怒り」はコントロールすることができるという。「自分の『怒り癖』を自覚し、『アンガーマネジメント』すれば、今よりも生きやすくなるはず」と話すのは、日本アンガーマネジメント協会の安藤俊介代表理事だ。「アンガーマネジメント」とは、その名の通り、怒りの感情を自ら管理すること。
「石橋被告も『アンガーマネジメント』できていれば、きっと事故は起こらなかった。2人の命は救えたはずだし、多くの人々の人生が変わることはなかった」(安藤氏)
※女性セブン2017年11月30日・12月7日号