つまり、事件は“対外的”に伏せられていただけでなく、“協会内”でも詳細が明らかにされなかったわけだ。もちろん、事件当事者の師匠である伊勢ヶ濱親方と貴乃花親方が、「当日に本当は何があったか」を知らないはずはない。
この時、両者の間で秘密裏に“示談交渉”があったと証言するのは若手親方の一人だ。
「伊勢ヶ濱親方から貴乃花親方には、金銭による示談が持ちかけられたそうですが、貴乃花親方が断固として拒否した。一方、被害届を出された鳥取県警としても、現役の横綱を傷害容疑で捜査するわけですから、“捜査を始めてから示談になった”では困る。だから示談になるかを繰り返し協会に確認したといいますが、貴乃花親方は“取り下げるつもりはない”という考えを曲げなかった」
貴乃花親方は水面下での“手打ち”に応じず、断固闘う姿勢を見せた。示談交渉が不調に終わるのと並行するタイミングで貴ノ岩は入院し、診断書が出された。そして、本場所が始まってからのタイミングで事件が表沙汰になったのである(相撲協会に事件公表が遅れた経緯、示談交渉の存在について問うたが、広報部は「調査中につき取材はお断わりする」とするのみだった)。
※週刊ポスト2017年12月1日号