国内

人生逆転セミナーを主宰する自称「恋愛伝道師」の意外な素顔

SNSで知り合った美女に「恋愛伝道師」をすすめられて…

 SNS経由でときどき届く、バラ色の人生を送るための耳寄り情報ときくと、誰もがうさんくささを感じるだろう。そのメッセージの発信主であれば、やはり普通ではない、ときには犯罪まがいのことも厭わないような恐ろしい人かもしれないと思いがちだ。ライターの森鷹久氏が、自分のフェイスブックに届いたダイレクトメッセージの送り主にコンタクトをとり、なぜそのようなビジネスに手を染めたのかを聞いた。

* * *
「冴えないオジさんだった私の人生を変えた!!!」
「恋愛伝道師・○○がお届けする、人生逆転セミナー開催!」
「カネもオンナも即ゲット!!」

 上品とは言いがたいが、男の欲望を直撃する文言。実はこれ、最近、筆者のフェイスブックに届いた、ダイレクトメッセージの中のキャッチの一部だ。

 本音を言えば、このような世界に興味津々な筆者。かつてはヒルズ族だなんだと謳い、派手に活動していた人たちのフェイスブックページに「いいね!」を押しまくっていたからか、上記のような怪しげなメッセージが多数届くようになった。

 その内容はほぼ「カネ」そして「オンナ」にまつわるもの。どれもセミナーへの参加や高額なDVDの購入を促すもので、スーツをバシッとキメて高級車に乗り、週末は六本木や麻布で~といったステレオタイプ若者が講釈を垂れる…といった内容だったが、今回は違った。

 その異色メッセージの主、恋愛伝道師と自ら名乗るオジサン・村田さん(仮名)は、現役で恋愛をしている……ようには見えない、枯れた風貌だった。さらに、よそよそしい作り笑顔に、ファッションも、社交性を感じる部分が極端に少ない印象。パーティに明け暮れ、常に大勢の人に囲まれている様子が感じられなかった。

 ところが、村田さんのアカウントを覗くと、確かに3000人近くのフェイスブックフレンドがいて、その顔の広さを伺わせる。しかし日々の書き込みの内容はといえば「今日は天気が良い」だの「お昼においしい街中華を食べた」「母親が入院した」といった極めて個人的な日常の一コマで、顔の広さを裏付ける日常が見えてこない。そして、3000人の知人がいるにも関わらず、投稿には毎回数件の「いいね!」がつくのみで、なぜかたまに「セラピスト」やら「占い師」「コンサルタント」を自称する派手なオバサンたちから「今日も一日頑張りましょう」などといった当たり障りのないコメントがされる。

 何もかもがちぐはぐで、そのアンバランスゆえに村田さんが何者なのか、かえって気になってくる。そんな訳で、彼からのメッセージに返信し、ぜひ会っていただけないか? と頼んでみた。

 その頼みに対して返ってきたのは、総額10万円弱という、村田さん監修の「恋愛必勝テキスト」購入の案内ページのURLのみ。そのページは、情報商材屋がよく使う「ランディングページ」そのまま。ランディングページとは、ユーザーが最初にアクセスするページのことで、商材への興味をひいて、そのまま問い合わせや購入へ結びつけることに特化している。

 ところが村田さんのトップページには、お世辞にも社交的とは感じられない寂しげな彼の顔写真が随所にちりばめてある。結果として、ここまで説得力がないランディングページはみたことがないと、逆に感心してしまうほどだ。

 だが、このアンバランスなページをつくってまで恋愛伝道師を名乗る村田さん、やはり気になる。村田さんの自宅の電話番号を知ることができた筆者は、直接、彼と話してみることにした。

──××(村田さんの名前)さんいらっしゃいますか?
男性「私ですが……。どちら様でしょうか?」
──私、森と申しまして。恋愛伝道師の村田さんにぜひお話を伺いたいと……
男性「そ……、そんなの知りませんから!!!」

 ガチャッ! と切られたが、即座にリダイヤルすると、また同じ男性が受話器を取り、自らが「村田さん」であることを認めた上で、かなり動揺した様子で応対してくれた。

──ぜひ恋愛伝道師である村田先生のセミナーを受けたいんですよ
村田さん「ど……どうしてこの番号が? 公表してないんですが、詐欺の電話ではないですよね?」
──私にフェイスブックでメッセージ送っていただきましたよね?
村田さん「……はい。その……、そうですね。皆さんにお送りしてまして……」
──先生は恋愛の達人だと。ご友人も多く、人柄も庶民的で。ぜひお会いさせて……
村田さん「……すみません」
──えっ?
村田さん「嘘なんです、すみません」

 続けて恋愛伝道師・村田さんの実態に迫るべく質問に質問を重ねた。残念ながら、恋愛に関するアドバイスには全く答えてくれなかったが、その代わりと言っていいのか、実が村田さんが情報商材詐欺の被害者の一人であることが判明した。

 村田さんは、茨城県内に住む未婚の会社員。55歳だが結婚したことがなく、恋愛経験は5人程度……と説明するも、話を続けると、その恋愛はすべてサービス料を払ってのおつきあいだけ、いわゆる「素人童貞」であることまで告白してくれた。以下、村田さんによる弁明。

「フェイスブックで、近くに住む若い女性から友達申請が来たのがきっかけです。初めは何かの間違いかと思ったが、隣町に住んでいて”優しそうだから連絡した”と言われて有頂天に……。その女性の知人とも繋がって、都内で開かれるセミナーに誘われました。SNSを使えば人生を逆転できる、と言われて70万を支払うと”村田さんは優しいし、女性の気持ちがわかるから”といわれ、恋愛伝道師と名乗るようにアドバイスされました……」

 こうして、セミナー主催者たちの術中にハマった村田さん。サービス料を払わない恋愛については経験がなかった村田さんなりに考えた「恋愛論」をフェイスブックとブログに掲載したところ、突如数十件のいいね! がつき、コメントが殺到した。もちろん、このいいね! もコメントも、セミナーを主催した情報商材屋が仕込んだものである。

 ところが、この反応に「注目された」と思い込んでしまった村田さんは、その後も急激に増え続けるフレンド数に自信を持ち、一日何回も更新を続けた。ところが……

「友達が五百人を超えたあたりで、いいねもコメントもパタッと無くなり、一日数十円はあったアフィリエイト収入もほぼゼロになった。セミナー担当者に相談したところ、さらにレベルが上のセミナーを受ける必要がある、といわれてしまって……」

 そして追加のセミナー料金を、50万、30万……と払い続けた結果、村田さんのフェイスブックフレンドは3000人を超えたが、なぜか「いいね!」やコメントが殺到することはなかった。そして驚くことに、村田さんは未だに自身を「被害者」だと認識していない。

「私が恋愛専門家だなんて……嘘ついたのがバレちゃったんでしょうか。やはり正直に生きていかないと……」

 村田さん自身は、アフィリエイトの収入が減っているのは自分が恋愛に詳しい専門家だと嘘をついているのが原因であって、そのセミナーがすすめるビジネスが間違っているとは思っていなかったのだ。

 彼の勘違いを笑ってばかりはいられない。ある日突然、ご近所さん、学校の後輩といった関係性を匂わす美女から届く友達申請。怪しいとは思いながらも、わずかな下心からうっかり許可をしてしまったがために、個人情報を抜かれたり、村田さんのようにあれよあれよと騙され、財産を奪われるケースが存在する。まさにSNSを使った、現代の「デート商法」や「マルチ商法」が蔓延しているのだが、被害者自身が「被害と思っていない」か、もしくは恥ずかしくて言い出せない、といった現実がある。

「自分は大丈夫」などと考えるべきではなく、女性もまた騙される可能性があることを知っておかないと、複雑化の進むネットコミュニティ上では簡単に「カモ」にされてしまうのだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平の通訳・水原一平氏以外にもメジャーリーグ周りでは過去に賭博関連の騒動も
M・ジョーダン、P・ローズ、琴光喜、バド桃田…アスリートはなぜ賭博にハマるのか 元巨人・笠原将生氏が語る「勝負事でしか得られない快楽を求めた」」
女性セブン
”令和の百恵ちゃん”とも呼ばれている河合優実
『不適切にもほどがある!』河合優実は「偏差値68」「父は医師」のエリート 喫煙シーンが自然すぎた理由
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン