「通勤中や休憩時間は就業時間外にあたるため、いってみれば社員の自由な時間です。今回のケースはペナルティーをつけない“お願いベース”のため、労働法上も問題はありませんが、業務上禁煙が必要な正当な理由がなければ、嗜好品をたしなみたい人のプライベートな時間を侵害している可能性があります。
例えば、通勤時間でも〈行き〉は接客や会社内での業務前なので、受動喫煙の問題からたばこの臭いを漂わせていたり、呼気を通じて他人に有害な影響が出る恐れがある──と説明しているすかいらーく側の理由は真っ当です。
でも、業務が終わって誰にも会わない〈帰り〉に、仕切られた喫煙コーナー内で一服することまで『NO』と言い始めたら、なかなか理解を得られにくいかもしれません」
何よりも、全社で禁煙の流れに向かうことで、喫煙者は立場的にビクビクする事態になりかねない。稲毛氏が続ける。
「罰則がなく、社内評価や査定には関係ないといっても、どんどん少数派になっていく喫煙者にしてみたら、“隠れ査定”のプレッシャーを受け続けているような気分にはなるでしょうね。肩身は狭くなる一方だと思います」
禁煙令が、かえって社員の精神的ストレスを増大させる結果になっては意味がない。すかいらーくが掲げる「健康経営」の手法と効果については、様々な角度から検証していく必要があるだろう。