「数年前、喉を悪くしての入院だったので、声を出したらアカンという状況でした。だから、看護師さんたちもほとんど話しかけてこなかったんですが、病棟で他の患者さんとのやり取りを見ていて気になりました。
小学生どころか、赤ん坊に話しかけるような口ぶり。“高齢者はみんな幼児返りしている”と決めつけられているようで、いい気がしなかった。もし、俺にそんな口調で話してくる看護師がいたら、怒鳴りつけていたと思いますよ」
◆配慮が欠けていました…
こうした看護師、介護士ら高齢者のケアを担う人材の「言葉遣い」を巡る問題は、関係者の悩みのタネになっているという。
医療・介護施設での接遇研修に携わる、しのコーポレーション社長・濱島しのぶ氏が解説する。
「高齢者のケアに携わる施設の経営者にとって、目下の最大の課題の一つが看護師をはじめとするスタッフの言葉遣い、態度の改善です。敬語を使わず、子供扱いすることが患者からの苦情につながっています」
濱島氏が研修に際して訪れたある病院でのことだ。4人部屋に入院していた上品そうな50代女性が、声を潜めながら濱島氏に話しかけてきた。女性は、「看護師さんが、同じ部屋の他の患者さんにも聞こえるような声で“おしっこ、取れた?”とか“うんち、固いの出た?”とか聞くのが恥ずかしくて……」と訴えてきたのだという。
「排尿や排便の記録を残さなくてはならないのは確かですが、歳を重ねた患者への配慮があまりに欠けていました。こうした言動は、平成生まれで、まだ役職に就いていない看護師に多く見られます。他人とのコミュニケーションの距離の計り方が苦手で、クレームの責任を取る立場でもないので、なかなか改善するのが難しいのです」(濱島氏)
※週刊ポスト2017年12月15日号