角栄の時代は高度経済成長末期、工場が大都市圏に集中し、公害など成長のひずみが大きくなり、地方は開発に取り残されて格差が拡大していた。国民は佐藤長期政権に倦み、政治の転換を望んでいた。そこに角栄が工場を大都市から地方に移転させることで人口と産業の再配置をはかる列島改造論を掲げて颯爽と登場し、国民は熱狂的に迎えた。
そして現在、アベノミクスで都市と地方の格差が広がり、正規と非正規の格差が固定化して社会は閉塞状況に陥っている。国民は安倍長期政権に飽き、時代と政治の転換を託せる新たなリーダーを求めている。
「角さんのカリスマ性は鋭い発言と、言葉に発したことは実現するという実行力。進次郎は若さとルックス。彼がいることで古い自民党から新しい自民党に政治が変わっていくという期待感を高めている」(作家・大下英治氏)
実力の有無とは無関係に、まさに「時流」に乗ったという見方である。だが、角栄は列島改造論で高度成長の是正だけでなく、〈20代、30代の働きざかりは職住接近の高層アパートに、40代近くになれば、田園に家を持ち、年老いた親を引き取り、週末には家族連れで近くの山、川、海にドライブを楽しみ、あるいは、日曜農業に勤しむであろう〉と目指す社会の具体的な未来予想図を示し、国民に夢を与えた。
進次郎は2020年の東京五輪後に日本は深刻な危機がくると将来を見据えて国民に警鐘を鳴らしているものの、処方箋と目指す社会の具体像は全く見えない。角栄の姿を追って2万枚の写真を取り続け、小学5年生の進次郎を撮影し、その眼光に思わず射すくめられた経験も持つカメラマン・山本皓一氏が指摘する。