「赤ちゃんのように柔らかい手でした。私は自分の理容店を津波で流されて落ち込んでいましたが、何度もひざをついて避難者を励ます美智子さまの姿に『これは私も頑張らねえと』と心を決め、地震から3か月後に店を再開しました」(松田さん)
皇室ジャーナリストの山下晋司さんが続ける。
「皇后陛下を拝見していると、『国民に寄り添う』とはどういうことかがわかります。被災地ご訪問でも、相手のかたと一体化しているように、相手のかたのことをご自分のことのようにお話しされています」
被災地訪問と同時に、美智子さまが大事にしているのが「宮中祭祀」だ。宮中祭祀とは、天照大神が祀られている賢所、歴代天皇・皇族が祀られている皇霊殿、神殿からなる宮中三殿で行われる祭儀のこと。
「宮中祭祀では、国家の安寧、国民の幸せ、世界の平和が祈られます。国民とともにある皇室を願われる両陛下は、宮中祭祀を『最も重要なお務め』と位置づけて、決して休んだり手を抜いたりなさいません」(前出・宮内庁関係者)
どんな時も国民とともにあり、尽くそうとされる美智子さま。聖心女子大学で美智子さまの3学年先輩だった作家の曽野綾子さん(86才)は、そのお姿は聖心時代の大勢いた下級生の1人だった頃から少しも変わっていないだろうと言う。
「皇后さまは、昔も今もご自分を立派に保ちつつ、しかも周囲のことを心にかけていらっしゃいますね。聖心には、『できることを以って人のために尽くせることを光栄と思え』という空気があり、誰もができる範囲で他人のため社会のために尽くすことが自然にできるように訓練されています。『その時にできる人が、できることをやる』ことがいいのです」
美智子さまのどこまでも相手を思いやり、尽くそうとする心は、学校で培われたものかもしれない。曽野さんは聖心女子大学の「愛」の教えは美智子さまに根づいていると続ける。
「『愛』とは人を好きになることではありません。どんなに自分がつらい状況でも、見返りを求めず、相手に尽くすことができることです。愛とは『見つめ合うことではない。同じ目標を見ること』だそうですから。皇后さまというお立場は、むしろご自分を犠牲にされても…とお考えかもしれません」
近年、ご高齢な上に、頸椎症性神経根症など、満身創痍の体で公務を続けてこられた。すべては国民のために。
いかなる困難を前にされても決して立ち止まることなく、歩みを進めてこられた美智子さまの姿に、いつしか人々は“国母”と呼び、崇めるようになった。そして美智子さまもそんな国民の思いに、全身全霊を懸けて応えられた。
撮影/雑誌協会代表取材
※女性セブン2017年12月21日号