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2017.12.20 17:00  マネーポストWEB

落合陽一氏「自己啓発書を読んで“意識だけ高い系”になってはいけない」

「現代の魔法使い」の異名を取る

『情熱大陸』に出演し、「レトルトカレーをストローで吸う」姿が注目された筑波大学准教授で学長補佐も務める落合陽一氏。ネットではその奇妙に見えるシーンが数多く拡散されたが、落合氏の実像はAI(人工知能)やVR(バーチャル・リアリティ)、AR(拡張現実)といったテクノロジーを駆使した最先端の研究者だ。そんな落合氏が、著書『これからの世界をつくる仲間たちへ』の中で、若い世代に向けて「コンピュータとの向き合い方」「自分自身の高め方」を綴っている。「“意識だけ高い系”にはなるな」──どういうことなのか。

 * * *
「次の世界」に向けて、どんなことを学ぶべきかを考えるのは本当に難しいことです。ただ基本的には、「コンピュータには不得意で人間がやるべきことは何なのか」を模索することが大事だと言えます。

 それはおそらく、「新奇性」や「オリジナリティ」を持つ仕事であるに違いありません。少なくとも、処理能力のスピードや正確さで勝負する分野では、人間はコンピュータに太刀打ちできない。ざっくり言うと、いまの世界で「ホワイトカラー」が担っているような仕事は、ほとんどコンピュータに持って行かれるのです。それは、よく人工知能が職を奪うという恐怖を掻き立てる表現とともに語られますが、ほんとうの問題は、どのようにして人の良いところと人工知能の良いところを組み合わせて次の社会に行くのかということだと思います。つまり迎合や和解のために、「人工知能」「コンピュータ」という“隣人”の性質について考えないといけません。コンピュータとの“文化交流”が必要なのです。

 ところが若い世代に向けて書かれたビジネス書や自己啓発書の類を見ると、そういう世界の変化や、文化についての議論が前提になっていません。彼らにとってコンピュータは「道具」という認識にすぎないのです。

 そういった本によくある話題、たとえば「人から聞いた話は30秒以内にノートに書こう」とか、「名刺交換をしたらこうやって効率よく整理しよう」とか、そんなことはコンピュータのほうがよほどうまくやってくれます。

 たしかに、優秀なビジネスマンになるためには、処理能力の高さと根回し能力が必要でしょう。でも、ホワイトカラーのビジネスマンの社会的寿命がコンピュータの台頭によって尽きようとしているときに、そのためのスキルを磨いても仕方ありません。銃や大砲の時代が始まっているのに、兵士に剣術の奥義を叩き込み騎馬戦で戦場に出るようなものです。

 それなのに、多くの啓発書は相変わらずホワイトカラー教育を志向しています。で、そういう自己啓発書やSNS上のオピニオンリーダーの言うことを真に受けた人たちが、いわゆる「意識(だけ)高い系」の大学生になったりする。これはかなりマズいことで、正直、いまの中学生や高校生には、とりあえず「“意識だけ高い系”にだけはなるな」と言いたいぐらいです。

 本当に意識が高い、真の意識高い系になる分にはいいんですが、人間、楽をしたがる生き物なので、頑張ったアピールだけで終わってしまうケースが多い。

 それはもったいないことです。なぜそうなるかと言えば、いま成功している資本家や上流階層たちは自分の人生を肯定したいがために、当然ルール作りを自分たちの流儀で行おうとします。その「自己流のビジネスルール」が書かれたのが、多くの自己啓発書です。

 実際は、その間に世界のどこかでイノベーションが起こり、業態を一掃する。その敗北の歴史が我々の国の2000年代でした。本当は敗北しているのに、古くからある「映像の世紀」のビジネススタイルとして、発信者とフォロワーを分けることで搾取の枠組みを作る。その結果、生まれたのが「意識だけ高い系」なのです。

 たくさんの違った常識を持つこと。複数のオピニオンリーダーの考え方を並列に持ちながら、自分の人生と比較し、どれとも違った結論に着地できないか、常に考えること、そういう頭脳の体力が大切です。

◆おちあい・よういち/1987年生まれ。筑波大准教授、学長補佐。メディアアーティスト。東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。IPA(独立行政法人情報処理推進機構)認定スーパークリエータ。BBC、CNN、TEDxTokyoをはじめ、メディア出演多数。超音波を使って物体を宙に浮かせ、三次元的に自由自在に動かすことができる「三次元音響浮揚(ピクシーダスト)」で、経済産業省「Innovative Technologies賞」を受賞。2015年には、米the WTNが世界最先端の研究者を選ぶ「ワールド・テクノロジー・アワード」(ITハードウェア部門)において日本からただひとり、最も優秀な研究者として選ばれた。〈現代の魔法使い〉の異名を取る。

※落合陽一・著『これからの世界をつくる仲間たちへ』より

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