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2018.01.03 13:00  マネーポストWEB

落合陽一氏「僕はワーク・ライフ・バランスなんて考えたことない」

眠る時間を削って研究に没頭しているという


『情熱大陸』への出演でも注目を集めた、メディアアーティストにして筑波大学准教授で学長補佐も務める落合陽一氏(30)。AI(人工知能)やVR(バーチャル・リアリティ)、AR(拡張現実)といったテクノロジーを駆使した最先端の研究者である落合氏は、著書『これからの世界をつくる仲間たちへ』の中で、テクノロジーがますます進化する中での「働き方」について綴っている。キーワードは「経済感覚」「時間感覚」だという──。

 * * *
 自分にとって何が幸福かを明確にしていれば、他人と自分を比較して落ち込むことはありません。別の言葉で言えば、それは「経済感覚」ひいては「時間感覚」をしっかりと持つということです。

 経済と聞くとお金のことだと思うかもしれませんが、そうではありません。幸福感はお金だけで決まるものではないので、ここでいう「経済感覚」には、もっと広い意味合いがあります。とくにこれからの世界で考えなければいけないのは、「お金」と「時間」のどちらを大事にするかという問題でしょう。

 なぜなら、今後の世界を支配するコンピュータにとって、「時間」はきわめて重要な概念だからです。

 コンピュータが演算をする際、コストを決めるのは「仕事」÷「処理速度」=「かかる時間」の1点だけです。ある結果を出すのに、どれぐらいの処理時間を要するかが問われます。世界のコンピュータ化が進めば、人間もそれと同じこと。時間が貨幣と同じような価値を持つことになるでしょう。

 だとすると、人生を考える際には大きく分けて2つの基本方針があります。

「時間を切り売りしてお金を稼ぐ」のか。それとも、「自由に使える時間を手に入れる」のか。

 どちらを選ぶかはそれぞれの価値観次第ですが、少なくとも僕は後者が自分にとって幸せな生き方だと考えて、いまの仕事(研究者)を選びました。

 たとえば医師や弁護士は、お金を稼ぐには良い職業でしょうが、自由に使える時間はほとんどありません。でも大学の教員は、講義や会議以外の時間をかなり自由に、研究するのに使えます。

 ただし、それは「余暇」がたくさんあるということではありません。「余暇」が欲しいなら、むしろ時間を切り売りするほうを選ぶでしょう。そちらを選んだ場合、時給を上げることができれば余暇は増えます。逆に、時給の低いブラックな仕事だと、余暇はなかなか得られません。

 このように、時間を切り売りする仕事を選ぶと、人生は「お金を稼ぐ時間」と「休む時間」に分かれます。すると、いわゆる「ワーク・ライフ・バランス」を考えざるを得ません。これは文字どおり「仕事と生活の調和」を意味する言葉で、ビジネス書にもよく出てきます。そのバランスが「ワーク」のほうに偏ると幸福な人生にはならない、と考える人が大半でしょう。

 でも、それは万人に当てはまる考え方ではありません。ワーク・ライフ・バランスが問題になるのは、「好きなこと」「やりたいこと」を仕事にしていないからです。解決したい問題がある人間、僕だったら研究ですが、そういう人は、できることなら1日24時間、1年365日をそれに費やしたい。

 だから僕は、時間を切り売りしてお金を稼ぐのではなく、自由な時間をより多く得られる仕事を選んでいるわけです。ワーク・ライフ・バランスなんて考えたこともないし、その概念自体が僕には必要ありません。

◆おちあい・よういち/1987年生まれ。筑波大准教授、学長補佐。メディアアーティスト。東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。IPA(独立行政法人情報処理推進機構)認定スーパークリエータ。BBC、CNN、TEDxTokyoをはじめ、メディア出演多数。超音波を使って物体を宙に浮かせ、三次元的に自由自在に動かすことができる「三次元音響浮揚(ピクシーダスト)」で、経済産業省「Innovative Technologies賞」を受賞。2015年には、米the WTNが世界最先端の研究者を選ぶ「ワールド・テクノロジー・アワード」(ITハードウェア部門)において日本からただひとり、最も優秀な研究者として選ばれた。〈現代の魔法使い〉の異名を取る。

※落合陽一・著『これからの世界をつくる仲間たちへ』より

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