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2018.01.03 15:00  マネーポストWEB

「専業主婦は2億円損をする」の真意

女性が生涯稼げる賃金はいくらなのか?


 日本の年金財政が逼迫し、男女問わず「生涯現役」で仕事をしなければならない時代が到来している。勤務形態ひとつを見ても、正社員、契約社員、派遣社員など働き方が多様化するなか、女性が生涯稼げる賃金はいくらなのだろうか?

 この問題について、大きな波紋を呼んでいるのがベストセラー『言ってはいけない 残酷すぎる真実』など多くの著書で知られる作家・橘玲氏の新刊『専業主婦は2億円損をする』だ。本のタイトル通り、金銭的な面で言えば専業主婦は生涯稼げるはずの「2億円」をドブに捨てている、とインパクトのある数字とともに紹介している。「女性の生涯賃金2億円」とはどういう計算なのか。著者である橘氏に聞いた。

「大学を出た女性が60歳まで働いたとして、平均的な収入の合計は2億1800万円になります。ちなみに退職金は含まれていません。経済学では、別の選択をすれば得られた利益を逸することを機会損失(機会費用)といいます。日本の会社は年功序列で、20代や30代前半で会社を辞めれば安月給のままですから、専業主婦になることの機会損失はおよそ2億円ということになります」(橘氏。以下「」内同)

 たしかに、労働政策研究・研修機構『ユースフル労働統計2016』によると、大学・大学院卒の女性が学校を卒業してただちに就職し、60 歳で退職するまでフルタイムの正社員を続ける場合、生涯賃金は2億1800万円となっている(退職金は含めない)。

 とはいえ、ネット上などでは「生涯賃金2億円をもらえる女性が本当にいるのか」という疑問の声も目立っている。

「そもそも日本では、大卒サラリーマンの生涯賃金は3億~4億円といわれています。これまで私は、日本人の生涯賃金を3億円として人生設計を論じてきました。これは男性で大手企業に入社したケースですが、日本も雇用機会均等法で男女平等を定めている以上、大卒の女性でも同じ額を得られるはずです。今回は出版社の意向で『2億円』にしましたが、私としては、女性読者を対象にするとなぜ1億円少なくしなければならないのか、若干抵抗がありました。だからこそ、『女がそんなに稼げるわけがない』という批判が当の女性(専業主婦)から大量に出てきたことは、正直、かなりの衝撃です。

 一握りの高所得者がいるから平均が高くなり、中央値とはかけ離れているとの批判も目立ちますが、資産は累積効果が働きますから、たしかに何百億円、何千億円もっている超富裕層が平均を引き上げて中央値とかい離します(統計学でいうベキ分布)。しかし収入は正規分布(ベルカーブ)に近く、何億円も稼ぐ女性がたくさんいるわけではありませんから、身長や体重と同じく平均値で見るのが適切です。ごくふつうの大学を出てふつうに働き続けた女性の生涯賃金が2億円というのは決して非現実的な数字ではありませんし、大手企業の幹部社員や専門職なら女性でも生涯賃金は3億、4億になるでしょう」

 そうはいっても、2億円を稼ぐ女性など見たことも聞いたこともない、というコメントが多いのは、日本の会社では、総合職で入社した大卒女性が定年まで勤め上げるケースが少ない、という点が影響しているのかもしれない。

 日本の会社は、残業などで“会社への忠誠”を示さなければ出世しにくい構造になっている。「子どもが生まれても働き続けたい」と考える女性がいても、男性や独身女性と同じように働くことが難しい以上、給料も減るし出世も望めなくなる。そうして仕事への不満や行き詰まり感から会社を辞めて“やむなく”専業主婦になる女性も少なくない。

◆安倍政権は日本から“専業主婦”という言葉を一掃する

 日本の会社にこうした構造的な問題があることも踏まえて、今後どういう働き方が選択肢になってくるのか、あらためて橘氏に聞いた。

「働いてお金を稼ぐちからを経済学では『人的資本』といいますが、日本や欧米のようなゆたかな社会では人的資本こそが最大の富の源泉です。そのうえ少子高齢化の日本は人手不足で、これから若い労働力の価値はどんどん上がっていく。会社にいづらくなっても働くことまでやめる必要はないわけで、20代や30代でせっかくの人的資本を放棄するのはものすごくもったいない選択です。

 もちろん、共働きになれば専業主婦家庭の2倍ゆたかになれるわけではありません。しかしその差が1.5倍、あるいは1.2倍であったとしても、長く働くことで複利で差は開いていきます。60歳あるいは65歳の定年のときには、その「格差」はとてつもなく大きくなっているでしょう。

 人口減と超高齢化に悩む安倍政権は『女性が活躍する社会』を打ち出しました。これは要するに『日本から“専業主婦”という言葉を一掃する』ということであり、これから専業主婦モデルに有利な条件はどんどんなくなっていくはずです。こういうことをいうと『安倍政権の主張に乗っているだけじゃないか』との批判も出てきますが、これは話が逆で、「保守」の安倍首相はもともと妻が家庭で子育てに専念するのが当然と思っていたはずです。そんな安倍首相ですら「女性の活躍」を言わざるをえないほど、時代が変わってきているということだと思います」

 ネット上のコメントのなかには「専業主婦が幸せになれないなんて、世の中がまちがっている」というものも目立った。

「人生100年の時代になって、夫が20歳から60歳まで40年働いて積み立てたお金で、60歳から100歳までの40年間、夫婦で計80年間を安心して生きていけるようなことが可能かどうか、いちど冷静に考えたほういいと思います。これはもちろん、妻を専業主婦にしている夫の問題でもあります。

 現在の年金制度は、55歳で退職して65歳くらいで寿命を迎えた時代に設計されたものですから、少子高齢化や人生100年時代に行き詰まるのは当然です。こうした現実を理解したうえで、『わたしは専業主婦の方が幸福になれる』『妻を専業主婦にして、自分一人で稼いだほうが幸福だ』と判断したのであれば、それは個人の自由な選択なので、私がとやかく言うことではありませんが」

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