国内

児童ポルノ「単純所持」への危機感はなぜ薄いのか

 Torとは、接続経路を匿名化する技術や、それを使用したソフトウエアのこと。通常、ネットに接続すると、どこの国のどの街のどこから、どんな機械を使用して接続したのかが記録され、接続先にも通知される。ところがTorを利用すると、数千の中継地点を追加し目的地以外は匿名化されるため、発信源を特定することがほぼ不可能になる。何層にも重ねて暗号化され、中継地点をめくってもめくっても本体にたどりつけないことから「タマネギ」のニックネームで呼ばれることもある。

 このTorの仕組みは複雑だが、利用は難しくない。いずれにしても“足がつく”可能性が、従来より圧倒的に低いために、そこには過激で、より違法性の高い児童ポルノが堂々と掲載されていたり、ダウンロードできるようになってしまっているのだ。

「たとえ摘発されても、これは性癖の問題ですから、彼らは何度も何度も繰り返し児童ポルノを追い求める。薬物依存と同じ病気なんです。需要もあるから、供給する側も常に存在する」(前出の元編集者X氏)

 我が国では「児童ポルノ」に対する社会の関心が低いと言われている。児童ポルノの単純所持が「違法」であることについて、なぜ持っているだけで捕まるのか? などと、ネット上で議論が起こることもある。そこには被害者の声が聞こえないからという、加害者にとって実に身勝手な理由が透けて見える。

 当然だが、児童ポルノの被害者は児童である。子供が加害者にも聞こえるような方法で被害を訴えることは現実にはほぼない。まさに“声を上げない存在”だ。声を上げなければ被害者と見做されない風潮が蔓延すれば、児童ポルノ製作者、所有者たちの罪の意識が薄くなる。性犯罪に巻き込まれた女性に対しても、同じような理屈で被害があるという現実を見ない者が多すぎる。

 だが考えればすぐにわかるように、相手が声を上げないからといって一方的に攻撃し続ける、相手の人格が壊れるまで追い込むのは、卑劣この上なく、人間としての生き方を問われるようなおぞましい行為である。児童ポルノの被害者がこの先、どんな人生を歩むのか。誰でも簡単に想像がつくだろう。

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