芸能

俳優・堤真一が描く夢は「60過ぎたら演出家」

 このとき、すでに堤の才能を見出していた玉三郎の熱心な勧めもあり、堤は舞台役者の道を歩み出す。だが、下積み時代の8年間は、4畳半の風呂なしアパートで極貧生活を送った。

「仕事で遅くなって銭湯に行けない夜もあったけれど、ガスコンロで沸かした熱湯に水を足して、体を洗っていました。でも、それほど苦ではなかったんですよ。少しずつ仕事が増えてくると周りから引っ越しを勧められたけど、僕は『住む部屋に金を使うくらいならニューヨークに芝居を観に行きたい』と言ってね。たまたま知り合いが現地にいて宿代がかからなかったので、1か月半くらい芝居三昧の日々。それはもう刺激的で、次の年にはロンドンにも行きました」

 10年間ほど舞台を中心に活動した堤は、31歳のとき、フジテレビ系の「月9」枠の『ピュア』(1996年)で初めて連続ドラマのオファーを受ける。ヒロイン・和久井映見との共演で脚光を浴びると、2000年には同じ「月9」枠の人気ドラマ『やまとなでしこ』で主演・松嶋菜々子の恋人役を務め、大ブレイクを果たす。昨年はドラマ『スーパーサラリーマン左江内氏』や映画『DESTINY 鎌倉ものがたり』など多くの作品に出演し、多忙な毎日を過ごしている。

「今日みたいな舞台稽古の日は、立ち居振る舞いの段取りや、台詞が頭の中でごちゃごちゃになって疲れますね。なので、家に帰って飯を食いながらビールを飲むと、1回寝てしまいそうになるんです。でも少し時間が経つと元気が出てきて、台詞を覚えなければいけないと焦って台本に向かう。いざ本読みを始めると没頭して、はっと気づくともう夜中の3時。そこから軽く1杯飲んで4時くらいに眠って、朝8時半には起きます」

 プライベートでは48歳で結婚し、女の子を授かった。4歳の娘の話になると自然と顔がほころぶ。

「年をとってからの子供なので、いやぁもう、かわいいですね。まだ幼稚園ですけど、最近はものすごく生意気になってきましたよ。ちょっと僕が失敗すると、“もう~、とと(お父さん)ったら、ダメじゃない~”って言われるんです(笑い)」

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