松下:明菜ちゃんの反応は?
売野:嫌だったみたいです。既に、第2弾は来生えつこ、たかお姉弟による『あなたのポートレート』で決まっていたんですよ。ディレクターはアイドルと真逆のイメージの歌を出すことを躊躇していた。ところが、明菜さんのマネージャーが打ち合わせの時に『少女A』というタイトルを見つけて、曲を聞いたら「これ、シングルじゃない?」とひっくり返した。レコーディングでは、ふて腐れながら1回だけ歌ったそうです。
松下:それが良かったんですね。『少女A』で初めて『ザ・ベストテン』にランクインした時、明菜ちゃんはTBSに行くまでの服装を考えるため、自分のタンスをひっくり返して洋服を選んだそうですよ。衣装じゃなくて私服を。それくらい嬉しかったそうです。
太田:テレビで普通に喋っている時、無垢なほど素朴でしたね。
松下:彼女は自分のリハーサルが終わっても、セットのソファーに座って、他の歌手の歌を一緒に口ずさんでいましたね。香港ロケ帰りに「お土産です」と時計をくれたこともありました。
『ザ・ベストテン』の山田修爾プロデューサーが「久米さんが百恵ちゃんを好きだったように、賢ちゃんは明菜を好きってことにしようよ」と演出していたこともあって、明菜ちゃんの声で「只今、松下は留守にしております」と私の家の留守番電話のメッセージを作ってくれたこともあった。純粋に歌が好きで、気さくな人だと思います。