2017年の新語・流行語大賞にも選ばれた「インスタ映え」。しかし、そのインスタも、実際に使わないとわからないこともあるはず。そこで女性セブン編集部きってのアナログ記者A子(29才・独身)が慣れないスマホを操ってインスタを開始した。
これまで一切のSNSから距離をおいてきたA子は、店頭や旅先で嬉々として写真を撮ってアップする人を見ては、「何でわざわざ写真を撮るのだろう」「今ある実物をじっくり見ればいいのに」と内心で毒づいていた。
だが意を決して撮影に挑むと、これがなかなか難しい。何をどう撮ればいいのか、さっぱりわからないのだ。
A子は年末年始に台湾に旅行にいく予定だったので異国情緒たっぷりの風景を撮影しようと意気込んだが、現地はひどい雨でやる気がそがれた。
結局、タクシーの窓越しに撮った空の写真をアップするも“映え”にはほど遠く、誰も「いいね!」をくれなかった。
その後も食べ物や風景の写真を見よう見まねでアップするがしっくりこない。普段撮影を意識していないので、ご飯を食べ終えてから「しまった、写真忘れた!」と慌てることもしばしばだった。
だが悪戦苦闘を重ねるうち、A子はあることに気がついた。始める前はインスタをする人は「撮影に夢中で現実を見ていない」と思っていたが、もしかしたらそれは逆で、インスタをする人の方が「一瞬、一瞬をしっかり見ているかもしれない」と思い始めたのだ。
実際、「今日は何を撮ろうかな」と生活において写真撮影を意識すると、通常なら見逃すような細かな点にまで意識が及び、周囲をよく見るようになることを実感した。
◆初めての「いいね!」
正月休み明けに会社のデスクで仕事中、隣の席の同僚が買ってきたピンク色のドーナツが目に入った。都内の人気店に並んで買ってきたのだという。普段はあまり会話をしない同僚だったが、「写真、撮ってもいいですか」と声をかけてドーナツを撮影してアップした。
するとA子のインスタに初めて「いいね!」がついた。
以来、彼女は1枚の写真が人と人を結ぶ魅力に取りつかれ、どこへ行くにもカメラを手離さなくなった。
実際、アンケート会社『マクロミル』の調査によれば、ここ10年で日本人1人当たりの写真保有数は倍増した。移ろいゆく時のなかで気になった物やイベントなどを写真で残しておけば、その場での体験や感情をいつでも思い出せる。今の時代、文よりも音よりいちばん早くてわかりやすい“世界と自分の記録装置”が写真なのだ。
SNSに詳しいニュースサイト編集者の中川淳一郎さんは、インスタに「新しい文化」を感じる1人だ。