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2018.01.28 07:00  マネーポストWEB

10年弱で400%超上昇 “日本最強”投資信託の実力とリスク

下落局面での強さが評価されている(ひふみ投信のパンフレットより)


 日経平均が26年ぶりに2万4000円台を記録し(1月18日)、世の“投資熱”が高まっている。中でも今年から始まった「つみたてNISA」は、老後資産の活用先として注目を集め、投資信託(投信)ブームを牽引している。その中で「ベスト」と評価されているのは、創設わずか15年目の独立系投信販売会社が売り出す商品だった。その強さの理由を知れば、これからの投信選びに大いに役立つはずだ。

◆“億り人”投資家も脱帽した

 つみたてNISAの対象商品は、投資リスクが相対的に低く抑えられている投信が主だ。

 投信とは投資家から集めた資金をひとつにまとめ、運用の専門家が代わりに株式や債券などに投資・運用する商品のこと。プロ任せにできることと、個別銘柄投資に比べてリスク分散しやすいため、投資初心者でも始めやすく、かつ老後資産のように“減らすわけにはいかないお金”の運用に向いていると評される。

 ただし、低リスクで初心者向きということは、「高リターン」が期待できないということでもある。ところが、そんな“常識”を覆す商品が投資家の間で注目されている。

 日本を代表する格付投資情報センター(R&I)が選定する「R&I ファンド大賞2017」のNISA/国内株式部門で、昨年3度目の最優秀ファンド賞を受賞したほか、トムソン・ロイター・リッパー ファンド・アワード・ジャパン2017でも「最優秀ファンド賞」を2年連続受賞した「ひふみ投信」である。

 ひふみ投信は大手の証券会社ではなく、独立系投信販売会社であるレオス・キャピタルワークス(以下レオス)が手がけている。

 高評価の理由は、やはり運用益の高さにある。2008年に基準価額(1万口あたりの値段)1万円で売り出されたひふみ投信は、現在5万3718円(1月16日現在)と、上昇率は実に400%超を誇る。資産1億円を誇る“億り人”の個人投資家のがおがお氏も唸る。

「この間、2010年の欧州債務危機、2011年に東日本大震災、そして2016年のチャイナショックなど金融市場に冷水を浴びせる出来事がありましたが、ひふみ投信は安定的に上がり続けてきた。そうした下落局面に強いというのが特徴です。

 自分の相場観を信じて個別株で大勝負する億り人の間では、値動きが穏やかな投信は敬遠されがちですが、10年で5倍というのは決して簡単ではない。大損をするリスクと隣り合わせでチャートと睨めっこして個別株を売買するくらいなら、ひふみ投信に資金を丸投げしておけばよかった。なにせ、買って放置しておけばいいだけなんだから……などと考えてしまうこともあります」

◆“新人銘柄”の発掘力が強み

 これほどの実績を残してきた“原動力”は運用担当者(ファンドマネージャー)たちの力にあるというのが、多くの投資家たちの見方だ。

 ひふみ投信を販売するレオスの代表取締役社長で最高投資責任者の藤野英人氏(51)は、“伝説のファンドマネージャー”と呼ばれる。野村アセットマネジメントやJPモルガン・アセット・マネジメントなどを経て2003年にレオスを設立。金融情報サービスを手がける財産ネット・企業調査部長の藤本誠之氏が語る。

「ひふみ投信は、主に中小型の成長企業に投資することで運用実績を伸ばしてきた。藤野さんは投資会社勤務時代から中小型・成長株の運用経験が豊富で、30代から存在が注目されていました。そしてひふみ投信の運用部にそうした“発掘上手”を集めている。現在の高評価は“チームカラーの勝利”と言えます」

 ひふみ投信の構成銘柄は日本株が主だが、藤本氏の解説どおり、他の投信との大きな違いは「IPO(新規上場)銘柄」が複数組み入れられている点にある。

「つみたてNISAで買える投信のほとんどが実績のないIPO銘柄を避けるのに対し、ひふみ投信は積極的に購入し、結果を出している。2016年12月に、産業機械のマニュアル製作会社のグレイステクノロジー(マザーズ・6541)が、1700円台で新規上場しました。上場した直後は低迷していましたが、ひふみ投信は大量に購入。今や8720円(1月16日終値)まで上昇した。このように優良な“新人銘柄”を見つける力が高いのです」(同前)

 その“スカウト力”は人事面でも発揮されている。前出のがおがお氏が言う。

「ひふみ投信には優秀な人材が多く揃っていますが、ヘッドハンティングされた人も多い。資産100億円以上に殖やした著名な個人投資家を運用部に招き入れたこともあり、投資家業界で話題を集めました。経歴よりも能力を重視し、有能なファンドマネージャーのノウハウを蓄積していくというやり方は、他の証券会社ではなかなか真似できないでしょう」

◆「割高」でも買われる理由

 安定した運用実績を重ね、資金が集まるサイクルを確立したことも強さの理由といわれている。

「基本的に投信は、資金が入ってくればそれで保有株を買い増すことになります。ひふみ投信は93%ほどを株で運用し、現金で持っているのは7%ほど。たとえば昨年12月は1か月で500億円の資金がひふみ投信に入ってきたのですが、この資金は保有株の買い増しなどに使われます。すると当然、保有株の株価も投信の基準価額も上昇しやすくなります。その結果、パフォーマンスが向上しさらに人気も上がり、資金が入ってくるという好循環になる」(前出・藤本氏)

 そもそもひふみ投信という名前の由来について、藤野氏はかつてネットメディア『ほけんぺでぃあ』の取材にこう答えていた。

〈「日を踏む」という意味(中略)一日一日、日を踏んでいく。つまり、長期のおつきあいをしていきましょうということです〉

「長期投資」を前提とするからこそ、投資家に資金を引き揚げられずに投信全体の運用資産を殖やせるとい強みがある。

 ひふみ投信は、中長期の投資に向くつみたてNISAと親和性が高い。藤野氏も昨年末に『マネーポストWEB』で、〈私たちは長期的な資産形成を応援する仕組みである『つみたてNISA』制度の普及は、若い世代を中心に日本中に投資文化が浸透し、投資を通じた日本の発展につながると信じています〉と語っていた。

 一方で、投資家目線で見るとこんな“弱点”がある。投信の最大のデメリットといわれるのは、購入者が販売会社に「日々かかる運用コスト」として支払う信託報酬だ。

 そのため投信を選択する“基準”のひとつとして、「信託報酬の安さ」が挙げられ、現在は0%台、あるいは無料という商品が人気を集めている。

 そんな流れの中で、ひふみ投信の信託報酬は約1%。割高感は否めない。この料率は、老後資金などを預ける利用者とひふみ投信との間に信頼関係がなければ成り立たない額だ。

◆今後も躍進は続くのか?

 投信である以上、元本割れのリスクはゼロではないし、今後も同様の運用実績が続く保証もない。

 投信に詳しい楽天証券経済研究所・篠田尚子氏は、純資産額の増加が、逆にデメリットとなる可能性を指摘する。

「ひふみ投信の純資産総額は現在5800億円に膨らんでいます。中小型株に特徴と強みがあった投信でしたが、最近では大型株や海外株も組み入れており、207銘柄に投資。既に資金の8割以上が東証1部銘柄という構成になっています。今まで通りの上昇率が今後も期待できるかは不透明でしょう」

 他にもリスク要因はある。篠田氏が続ける。

「ひふみ投信は、『国内小型株式』だったり主に世界中の株に投資する『グローバル株式』だったりと評価する機関によって分類がバラバラ。そのため類似ジャンルの投信との比較がしづらく、見通しも立てにくいのです。

 ファンドマネージャーの藤野さんの投資哲学に共感して投資する人も多いようですが、裏を返せば、トップや運用担当者の交代があれば、解約者などが一気に増える可能性もあります。こうしたリスクを理解した上で投資すべきです」

 最強と称えられているひふみ投信でも、当然リスクはある。現在、株式をメインに組み込んでいる投資信託は日本に5000本あると言われている。投信それぞれの個性をつかみ、自分の資産形成に合った商品を選びたい。

※週刊ポスト2018年2月2日号

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