スポーツ

牝馬の進退 走らせるべきか、子供を産ませるべきか

 問題は成績が上げ停まってしまっている馬。現役続行ならば、そこからの競馬でどれだけ賞金を稼ぐことができるのか。あるいは、繁殖に上げて元気な子供を産んだら、いくらで売れるのか。当然、シビアな計算が働きます。

 やはり思い出すのはサンビスタ。2014年、5歳の秋にJBCレディスクラシックを勝ってGI馬となり、一流どころの牡馬と走った12月のGIチャンピオンズカップでも4着になった。

 サンビスタはクラブの馬なので6歳春で引退することが規定となっています。たしかに3歳、4歳時は休み休みでしか使えず、馬はまだまだ若いと思っていましたが、タイトルも獲ったので、私も引退でいいだろうと思っていました。しかし、牧場サイドから「もう1年やってみてはどうか」と言われたのです。

 翌2015年、6歳でさらに成長、重賞ばかり9戦、牝馬限定戦を3勝、チャンピオンズカップでは12番人気の低評価を覆して勝ったのです。ホッコータルマエ、コパノリッキー、サウンドトゥルーなどダートの猛者を相手に見事なレースでした。そんなことで、暮れの東京大賞典も使おうかという話もありましたが、引退してお母さんになり、2017年春には、ルーラーシップ牝馬を出産しました。

 角居厩舎のデニムアンドルビーは3歳時にオークスで3着、ローズSに勝ってジャパンカップではジェンティルドンナの2着に健闘しました。古馬になってからもマイルから天皇賞(春)までGI戦線で活躍、ドバイにも行きました。5歳春に宝塚記念で2着になった後、屈腱炎で1年半ほど休みましたが、昨年暮れのチャレンジCで2着。

 今年も金杯に出走、8歳までよく頑張ってくれました。あと1戦で引退し、お母さんになります。

●すみい・かつひこ/1964年石川県生まれ。2000年に調教師免許取得、2001年に開業。以後16年で中央GI勝利数24は歴代3位、現役では2位。ヴィクトワールピサでドバイワールドカップ、シーザリオでアメリカンオークスを勝つなど海外でも活躍。引退馬のセカンドキャリア支援、障害者乗馬などにも尽力している。引退した管理馬はほかにカネヒキリ、ウオッカなど。本シリーズをまとめた『競馬感性の法則』(小学館新書)が発売中。年初に2021年2月で引退することを発表した。

※週刊ポスト2018年2月9日号

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