吉田氏はソニーで財務部門を歩いたあと、ソネットに転じ、上場させるなどの結果を残した。2013年に平井氏の要請によりソニーに戻り、以来、平井氏と二人三脚でソニー再建に取り組んできた。
中でもパソコン事業の撤退やテレビ事業の分社化など、痛みの伴う改革は吉田氏主導で行われた。言わば平井社長の番頭として“嫌われ役”を買って出ていた。しかし社長ともなれば嫌われ役のままではいられない。ソニーを引っ張っていくには求心力が不可欠だ。
平井氏も社長就任当初は、ソニーミュージック出身という出自から、求心力を危惧する声もあった。しかし平井氏は、ソニーの社員以上にソニーファンであることが知れるとともに、エンジニアや若手社員の心をつかんでいった。
吉田氏は会見で「ソニーの商品は好きだが平井氏のレベルには達していない」と正直に話しているが、同時に「ソニーもテクノロジーの企業として競争力を養っていかなければならない」とも語っている。そのためにもエンジニアの力をまとめあげる必要がある。それができるかできないかに、吉田ソニーの未来はかかっている。