芸能

舞踊家・田中泯 「本物の裏方は、エネルギーを送る」

俳優としても活躍する舞踊家の田中泯

 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、俳優としても活躍する舞踊家の田中泯が、映画『たそがれ清兵衛』で体験した現場でみた裏方について語った言葉をお届けする。

 * * *
 舞踊家としての田中泯が「師」と敬愛するのが、前衛的な踊りで活躍した土方巽だった。

「あの人は僕にとって特別な存在です。最初に土方の踊りを見た時、本当にびっくりしました。踊り方の問題ではなくて、こういうふうに人の一時間を平気で奪っておいて、あっという間にその一時間が過ぎる。それは踊り方じゃなくて、あの人自身が凄いからなんですよね。それで、土方のように舞台にいるにはどうすればいいのか考え続けました。彼に聞いても教えてくれるはずないから、僕は絶対に彼には習うまいと思いました。

 おそらく、彼にとっては『舞踏』という踊り方なんて問題じゃなかったんだと思います。流派を作る気もなかった。一番やりたかったのは『おどり』。

 日本の『ダンス』の歴史は『おどり』に始まります。言葉で意味づけされていない、音としてのみの『おどり』です。その音に今の表意文字としての『踊り』が宛がわれたことで意味が生まれ違うものになった。その頃は社会が成立していますから、もう本来の『おどり』とは違うものになっていたはずです。土方はそれ以前の『おどり』をやりたかったんだと思いました」

 田中は2002年の山田洋次監督による時代劇映画『たそがれ清兵衛』で、最後に真田広之の演じる主人公と決闘する剣豪役を演じた。五十七歳での「役者デビュー」である。

関連キーワード

関連記事

トピックス

水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
解散を発表した尼神インター(時事通信フォト)
《尼神インター解散の背景》「時間の問題だった」20キロ減ダイエットで“美容”に心酔の誠子、お笑いに熱心な渚との“埋まらなかった溝”
NEWSポストセブン
富田靖子
富田靖子、ダンサー夫との離婚を発表 3年も隠していた背景にあったのは「母親役のイメージ」影響への不安か
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン