標準語の「そうだね」という相手への同意や承認、共感の意味だけではなく、口調やイントネーションを微妙に変えることによって、感情や意志を伝えることができる。
たとえば、共感する時は言葉自体のトーンが高くなるが、「それは違うのでは?」という疑問の時はトーンが下がり、「違う見方や意見を持っているのだ」という時は語尾が短くなる。彼女たちは、そんな互いが発する「そだねー」の微妙なニュアンスを自然に聞き分け、コミュニケーションに役立てていたと思うのだ。
そして「そだねー」最大の特徴は、どんな時も相手を絶対に否定しない言葉であることだ。たとえ疑問や違う意見や戦術があっても、相手や相手の意見を尊重したうえで、「自分はこう思う」と話を続けることができる相づちであり、相手の話も聞きやすくなるコミュニケーションの潤滑油的な役割を担っている。
チームワークを保つうえで、会話をうまくつなげ、互いを真っ向から否定せず理解しあえるようになるためのこの相づちは、彼女たちにとって意図せずとも重要なコミュニケーションツールの1つだったと思う。
五輪以降、これまでにないほど盛り上がりを見せているカーリング熱。普段の試合でも選手たちの笑顔と「そだねー」と「もぐもぐタイム」を見ようと、追っかけるメディアも多くなることだろう。だが、それがいつまで続くのか? 「4年後の冬季五輪まで、その熱が冷めないよう…」というコメントを様々な番組で聞く度に「そだねー」と、画面に向かってちょっと冷ややかに言ってしまう。
撮影/雑誌協会代表取材