次に解雇の理由が問題になります。就業規則に解雇できる理由が特定されているはずですが、それらのいずれかに該当しなければ、そもそも解雇できません。ご質問にある辞めさせたい事情は、どれも通常規定されている解雇事由には当たりません。
感情的対立が大きくなって社内の秩序を乱すようになった場合に、形式的には解雇事由に該当するかもしれません。しかし、私情によるものとして解雇の合理性は否定されると思います。もっとも元妻が会社の秘密を社外に漏らすような事情があれば別です。ただ、その証明が容易ではありません。
そこで協議離婚により円満な解決をしていますし、従業員として雇い続けてみてはどうでしょう。それでも社業推進の妨げになるのなら労働者の権利として簡単に解雇できませんし、元妻のキャリアを活かせる職場を探し、場合によっては金銭補償も覚悟の上、退職を要請してみたら、いかがですか。
【弁護士プロフィール】竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2018年3月23・30日号