「2015年夏『日本のいちばん長い日』(半藤一利)を翻訳出版し、それ以後、年に3~4冊のペースで、日本の保守派の歴史観を紹介する書籍を刊行しています」

 これまでに『中国「反日」の源流』(岡本隆司)、『東京裁判』(日暮吉延)などを刊行。『真実の中国史』(宮脇淳子)は、1500冊売れればトントンという同国出版事情において、1万部以上を売り上げた。

「台湾では民進党の陳水扁総統(2000年~2008年)就任後、中国の影響を取り除く『去中国化(=脱中国化)』が進んだ。そうした社会状況が、これまでとは違う歴史観への興味を呼んでいます」(富察氏)

 民進党政権下の台湾では近年、国民党(国共内戦の末に大陸から渡ってきた外省人=中国人)によって押し付けられた歴史観ではなく、台湾人による台湾独自の歴史観を形成しようという機運が高まりつつある。

 日本統治時代への再評価や、中国風の名称を台湾風に改める「台湾正名運動」なども、その流れにある。台湾人が自らの歴史観や国家観を模索する上で、日本の保守陣営の論考が、補助線のような役割を果たしているということか。

『大東亜戦争肯定論』の売り上げは発売4か月時点で1000冊ほど。香港でも200冊ほど売れており、骨太の歴史書としては、堅調な売れ行きだという。

【プロフィール】にしたに・ただす/1981年、神奈川県生まれ。早稲田大学卒業後、地方新聞の記者を経てフリーライターに。2009年から上海に渡り、週刊誌などで中国の現状をレポート。近著に『この手紙、とどけ! 106歳の日本人教師が88歳の台湾人生徒と再会するまで』など。

※SAPIO 2018年3・4月号

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