「本当の問題は、そこまでしないと回らない保育園の過酷な職場環境にあるんです」
◆「本音を言えば、妊娠順番制はアリです」の意見も
「妊娠の順番」ルールがあるのは、決して松山さんが働いていた保育園や投書の保育園だけではない。今回、本誌・女性セブンは現役保育士200人に緊急アンケートを実施。すると驚くべき結果が出たのだった。
保育士の2.1%が「ある」、13.4%が「似たようなルールはある」と回答。しかも、「慢性的な保育士不足なので仕方がない」「一気に産休を取るのを防ぐため、仕方がない」との容認論も少なくなかった。
一方で子供を預ける側の母親はどう感じているのか。「あまりに時代錯誤」などという声が多かったが、こんな“本音”も聞こえてきた。つい先日、娘が卒園式を迎えたという都内在住の会社員・内藤恵理さん(仮名・38才)はこう話す。
「本音を言えば、妊娠順番制はアリです。保育士という子供を預かる仕事に就いた以上、周囲を考慮して出産計画を立ててほしい。実際に娘の担任は昨秋に突然、妊娠を理由にして若い先生に代わりました。小学校進学を控えた大事な時期に経験の少ない先生に代わって不安が募りました。私も出産経験があるので妊娠計画が難しいことは理解しますが、保育士の責任問題として考えれば、このルールは仕方ありません」
保育士の相次ぐ退職で閉園を余儀なくされた保育園もある。3月8日、横浜市鶴見区の認可保育園「寺谷にこにこ保育園」は保育士不足を理由に、来年3月末での閉園を発表した。同園は新規入園を停止し、今年4月からの新年度までに3才から5才までの園児37人を転園させ、残った1才から2才の園児19人は閉園までに転園させる方針だ。
「園児の母親たちは保護者説明会でこの方針を突然告げられて、『こんなことが許されるのですか』と憤っています」
こう語るのは、この問題を追及する日本共産党横浜市議会の古谷やすひこ議員だ。古谷市議によれば、にこにこ保育園では、昨年園長が他園に移ることを表明してベテラン保育士も連鎖的に辞めることに。後任の保育士を確保できず、園の運営が難しくなり、急な閉園スケジュールが組まれたという。
「転園先は行政が割り振りますが、新しい保育園に子供がなじめるのか、きょうだいはどうするのかなど問題が山積です。1年後の閉園までに在職の保育士が転職や転園をする可能性もある。残された1~2才の園児の受け入れ先が来年度末までに見つかるかどうかもわかりません」(古谷市議)
※女性セブン2018年4月12日号