その後も、法務・検察首脳部は昨年7月、同12月に林氏を次官にする人事案を上げたが、官邸は拒否して黒川次官を留任させ、ついに林氏は次官になれないまま名古屋高検検事長に異動した。法務・検察は煮え湯を飲まされ続けたのだ。
安倍官邸の人事介入への反発は、黒川氏の存在で政界捜査に“待った”をかけられてきた特捜部など捜査の第一線に立つ検事ほど強い。
それからほどなく、朝日新聞が財務省の文書改竄問題をスクープし、安倍政権は追い詰められた。伊藤氏が言う。
「朝日の情報源は改竄前と後の文書を持っていた大阪地検ではないかと見られていますが、流出を疑われるのを覚悟でやったとは考えにくい。むしろ、最高検の検察首脳部が安倍政権に痛打を与えるために出したのではないか」
オール検察の安倍政権に対する“宣戦布告”だったという見方だ。折しも佐川喚問の後、改竄の全責任を負わされた形の財務省サイドから不穏な情報が流れ出した。
「文書改竄にあたって、官邸と財務省本省の間で書き換える文面の調整が行なわれていた。窓口となったのは双方の中堅キャリアだった」
という内容で、その話には調整役となった2人の官僚の個人名や関係性などもあって妙に具体性を帯びていた。現時点では真偽不明だが、大阪地検特捜部が財務省への強制捜査と佐川氏ら財務官僚への取り調べで、官邸と財務省が改竄の協議を行なっていたという証拠をつかむことができれば、今度こそ、安倍官邸は決定的なダメージを被ることになる。
そこまで踏み込めるか、それとも官邸の顔色を窺って籠池夫妻立件で終わるのか、山本特捜部長の真価が問われる。
※週刊ポスト2018年4月13日号