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2018.04.06 07:00  マネーポストWEB

“消された年金” 機構は委託先の杜撰さ把握するも放置していた

日本年金機構は委託先の杜撰さを把握していた(写真:時事通信フォト)


 2007年、第1次安倍政権を崩壊させた最大の原因が「消えた年金問題」だった。旧・社会保険庁の杜撰な管理によって、約5000万件の年金記録が“宙に浮いている”ことが明らかになると、安倍首相は、「最後のお1人に至るまで記録をチェックして、正しくお支払いしていく」と大見得を切った。ところが、参院選で惨敗すると、早々に政権を投げ出した。今も、約2000万件の年金記録が消されたままの状態にある。

 今回の消された年金問題の発端は、毎年8月末~9月上旬にかけて機構から年金受給者に送られてくる「扶養親族等申告書」だった。この申告書に配偶者など扶養親族の所得情報を書き込んで返送すると、年金から源泉徴収される所得税の控除が受けられる。

 3月初旬の第一報の時点では、“申告書の書き方を間違える受給者がたくさんいたので、2月分の年金で130万人に過少支給が発生した”という話になっていた。

 ところが、である。3月20日になって、日本年金機構は会見を開く。そこで、申告書のデータ入力を委託した情報処理会社「SAY企画」が入力ミスを重ねたため、申告書を適切に提出したにもかかわらず、その内容が正しく2月の支給額に反映されなかった人がいると明らかにしたのだ。

 入力ミスなどによって年金を減らされていたのは約10万4000人。その総額は約20億円に及んだ。

 日本年金機構の前身は悪名高い社会保険庁だ。年金記録の杜撰な管理によって約5000万件もの年金記録が誰のものかわからなくなった「消えた年金問題」だけでなく、国民年金保険料の納付率を高く見せかけるための「不正免除問題」や、国民の払った保険料を無駄な箱モノなどに注ぎ込む「年金流用問題」など、不祥事が相次いだことを受け、社会保険庁は2010年に解体。その業務は日本年金機構に移管された。

 ただ、看板の掛け替え後も、不祥事の連鎖は止まっていない。2015年にはサイバー攻撃による125万件の個人情報流出、2017年には元公務員の配偶者ら約10万6000人に対して、過去最大となる約598億円の支給漏れが発生している。年金問題に詳しいジャーナリストの岩瀬達哉氏が指摘する。

「旧・社保庁は厚労省年金局のガバナンスが及ばない組織で、厚労省から来たトップより労働組合の委員長が幅を利かせ、大口の取引先に天下りポストを作り、記録の管理は杜撰だった。そうした腐敗があったから、国民の信頼を決定的に失ったわけですが、年金機構にはその信頼を取り戻さなくてはいけないという意識が決定的に欠けている。“国民のため”という意識がなく、機構の職員が楽をしようとしているだけだと思われても仕方がない」

 それは、機構が委託先の仕事が杜撰であると知りながら放置していたという経緯からして明らかだ。

◆ホームページを見ろ

 ITジャーナリストの佃均氏が解説する。

「データ入力を委託されたSAY企画は従業員が80人しかいないにもかかわらず、約1300万人分のデータを受注していた。最初から無理のある契約だったのです。しかも、落札価格は相場の4割程度と異常に安かった。SAY企画が入力作業の一部を中国の業者に再委託する契約違反をしていたことも明らかになりましたが、不正を犯しそうだとわからないほうがおかしいくらいです。

 しかも、機構は昨年10月の時点でSAY企画が『800人態勢で作業にあたる』と説明していたのに、実際には百数十人しか人員が用意できていないことを把握していた。にもかかわらず、“代わりの業者が見つからない”として契約を続行して追加データまで渡していた」

 つまり、機構は問題を放置し続けたのだ。中国の業者への再委託にしても、今年1月初めの特別監査で把握しながら、2か月以上も公表していなかった。

 2月上旬には、同15日の年金支給に先立って送付された振込通知書を見た受給者から、“年金額が少なすぎないか”という問い合わせが相次いでいたにもかかわらず、専用相談ダイヤルを設置したのは年金支給日2日前の2月13日になってから。しかも、ホームページに文書をアップしただけで、報道各社に広報しようともしなかった。

 年金受給者に対して“機構のホームページを見ないほうがおかしい”と言っているに等しい。

 民主党政権で厚生労働政務官を務めた山井和則衆院議員(希望の党)は、政府の姿勢にも問題があると指摘する。

「第1次安倍政権で年金記録問題が起きたことを受けて発足した当初は、まだ年金機構も信頼回復に力を注いでいた。しかし、第2次安倍政権が熱を入れるのは年金カットばかり。そうした政権のあり方を見て機構職員の意識が緩み、完全に“お客様目線”を欠く組織になってしまった」

 機構はSAY企画の入力ミスによる過少支給については、次の支給日(4月13日)に対象者に不足分を支払うとしている。

 だが、それで解消される過少支給は約10万人分に過ぎない。では残りについては、申告書を返送しなかったり、記入をミスしたりした受給者の責任なのかといえば、それも違っている。

※週刊ポスト2018年4月13日号

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