会社に不満を持つ者なら誰でも一度は言ってみたいのが「じゃあ辞めます!」というセリフ。しかし、急な告知で仕事を辞めたペナルティとして賃金をカットされてしまった場合、これは労働基準法違反ではないのか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。
【相談】
妻は派遣会社を通してパートに就いたのですが、急に体調を崩して辞めることに。その際、派遣会社は「1か月前に辞める意思を伝えなかった場合、賃金の2割をカットする」と通達。納得できない妻は労働契約書を見せてほしいといったのですが、見せてもらえず。これらは労働基準法に抵触していませんか。
【回答】
労働者から申し出る退職には民法が適用され、雇用期間の定めがない場合は原則として2週間経てば無条件で退職できますが、有期契約では3か月の予告期間が必要です。使用者が契約期間中の労働を期待して労務政策を立てているからです。
それでもやむを得ない事情があれば即時退職できますが、使用者に生じた損害を賠償する必要があります。例えば人手不足で、高額の賃金で雇ったような場合です。ただし、ご質問では体調不良が原因で、やむを得ない事情ですから、奥さんは実際に会社に発生した損害を賠償すれば退職できます。
なのに、会社は契約で合意しているからと給与を2割カットにするといっています。これは額の当否は別にして不当な主張です。なぜなら労働基準法第16条で「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」と定めているからです。というのも違約金の支払いを免れるために嫌でも働き続けることになり、事実上、労働を強制されることになるので禁止されています。