芸能

顔芸が特徴的な柳家一琴 古典をそのまま演じる面白さ

柳家一琴の「落語の上手さ」を解説

 音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、顔芸が特徴的な柳家一琴の「落語の上手さ」についてお届けする。

 * * *
 3月11日、神保町・らくごカフェの「柳家一琴の会」に行った。ここは高座がある喫茶店で、ほぼ毎日落語会(定員50人)が開催されている。僕にとっては編集部から歩いて行けるので便利なスポットだ。

 一琴は小三治の弟子で、二ツ目の時の名は横目家助平。「助平」は「すけへい」であって「すけべ」ではない。真打昇進が同時(2001年9月)だった橘家文蔵などは今も一琴を「横目家」と呼んでいたりする。

 2011年3月、一琴はらくごカフェで9日から14日までの6日間連続7公演で毎回3席ずつ、計21席のネタ下ろしをやるという意欲的な会を企画した。僕は初日を欠席、翌10日は足を運んで『かぼちゃや』『猫の皿』『死神』の3席を観た。

 そして翌日の午後、あの東日本大震災が起こった。一琴の会は19時半開演予定、僕は歩いて向かったが、ビルの1階入り口で出迎えてくれた一琴が「今日は中止です」と言い、「来たのは広瀬さんだけです」と付け加えたのだった。

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