認知症患者は全国で400万~500万人で、予備軍を合わせると1000万人以上と推計されている。認知症の中で一番多いアルツハイマー型認知症は脳にアミロイドβやタウなどの特殊なたんぱくが溜まり、神経細胞が壊され、死滅することで認知機能が障害される。
アルツハイマー型認知症は遺伝子異常による家族性が1%で、99%は孤発性だ。食生活やメタボリックシンドローム、うつなど様々な要素が絡んで発症すると考えられる。
日本脳神経外科認知症学会会長で、東京脳神経センター病院(東京都江戸川区)の堀智勝院長に話を聞いた。
「アルツハイマー型認知症の原因の一つであるアミロイドβに関して興味深い動物実験の報告があります。遺伝子変換でヒューマンアミロイドβを産生できるマウスを育成したところ、アミロイドβが脳に溜まってくると高率で“てんかん”の発作を起こすことがわかりました。さらに軽度認知障害(MCI)の患者を調査すると、認知機能低下と相前後して、てんかん発作を起こしているという結果も報告されています」
これはサンフランシスコのグラッドストーン神経病研究所が実施した研究で、アミロイドβが認知症やてんかんにも関与しているということを示唆している。この結果を受け認知症と、てんかんの両方を検査・治療することを目的とした日本脳神経外科認知症学会が設立された。
てんかんは激しい痙攣発作を起こす病気と思われているが、高齢になってから発症するのは複雑部分発作といわれる非痙攣性が大半だ。1点をじっと見つめる、口をぺちゃぺちゃ動かす、指などが突っ張るなどが主な症状で、それが2、3分続き、はっと我に返る。非痙攣性は主に側頭葉てんかんで、記憶をつかさどる海馬付近にアミロイドβが溜まることで脳波に異常が出て、てんかん発作を起こすと考えられている。