音楽以外の仕事でも活躍する(撮影:内海裕之)


 雌伏の時を経てデビュー5年後、日清カップヌードルのCMソングに起用された10枚目のシングル『ff』が大ヒット。翌年12月から1988年3月までの1年4か月間、アルバム2枚をひっさげて207本ものツアーを敢行した。ラストを飾ったのは、単独の日本人アーティストとして初となる東京ドーム公演だった。

「あの頃は一番お客さんが入っていた時期で、東京ドームのチケット5万枚も即完売。それまでの武道館公演も満員でした。1980年代後半の動員力は誰にも負けなかった。でもね、『こんなことはいつまでも続くわけがない』って不安ばかりで、ある日突然ライブ会場がガラガラになるんじゃないかと心配ばかりしていました」

 そんな大友の不安は現実のものとなる。1992年の『BRIDGE』以降、大きなヒットに恵まれず、ライブの数は減少した。2005年頃からツアーを開催できない時期が5年近くも続き、さらに2011年には突発性難聴を患うという蹉跌も味わうが、地道に活動を再開し、今年は東京、大阪で4回のライブをやり遂げた。

「まぁ、いろんなことがあったけど、人生は山あり谷ありですよ。どんな出来事も、いつか自分の血となり肉となるって思うようにしている。そう考えるのは、なかなか難しいけどね(笑い)」

 近年はドラマやバラエティ番組にも出演し、マルチな才能を発揮するが、活動の主軸はあくまで音楽。20年ほど前にマイケル・ジャクソンも担当したロサンゼルスのボイストレーナーから受けたレッスンの録音データを持ち歩き、時間があればボイストレーニングを欠かさない。肺活量を維持するために週に3回、ジムで8キロ走る。

「ハードなライブツアーをしていた2005年までは何もしなくても声が出ていたけど、今は歌わないと声帯の筋力が落ちて、あっという間に衰えてしまいます。年4本のライブで最高のパフォーマンスを出すために、文字通り命懸けで取り組んでいる。俺の中には、“おまえ、最高だよ!”とすべてを肯定する自分と、“こんなところで満足してんのか?”と否定する自分がいて、どっちの“自分”もギャフンといわせたくて日々自分を追い込んでいるんです」

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