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森永卓郎氏の真似をできない「普通の人」向けのマネー生活術の基本

森永卓郎氏が注目のマネー本を解説

【書評】『お父さんの「こづかい」は減らすな! お金と時間から自由になるための“やってはいけない12カ条”』/泉正人・著/朝日新聞出版/990円+税

【評者】森永卓郎(経済アナリスト)

 タイトルからすると、サラリーマンの愚痴の本のようだが、本書は、マネーライフの転換を提唱する本だ。ただし、最初私は戸惑った。本書の主張が、私がやっていることと、真逆だったからだ。例えば、新幹線の自由席に乗るな、ポイントカードをたくさん持つな、都心に住めといったものだ。ただ、読み進めるうちに、著者の主張は、私の考えと、非常に近いものになっていく。

 例えば、節税をするなという点だ。余裕が出ると、無駄な経費を使って、利益を圧縮しようとする。しかし、経費の額は、減税額を必ず上回るのだから、かえって手元のお金が減る。冷静に考えれば当然のことなのだが、それが分からない人が多いのだ。

 ワークライフバランスを50年単位で考えろという著者の主張も正しい。若い時はガンガン働いて、能力を蓄積する。そうすれば、中高年を迎えたとき、高い報酬を得られるようになって、ゆとりが生まれるから、人生全体でみれば、適度なワークライフバランスを達成できるのだ。

 本書を最後まで読んでから、もう一度最初から読み返してみると、私が初めに覚えた違和感は、本書が一般の人向けに書かれていることに起因していることに気付いた。例えば、私が自由席に乗るのは、この時期のこの時間帯だったら、発車寸前に飛び乗っても、確実に座れるという確信があるときだ。混雑が見込まれる場合には、私も指定席を取っている。

 私は、ポイントカードを40枚くらい持ち歩いているが、それは自分がポイントマニアで、すべてのポイントを頭のなかで管理でき、余計なダイレクトメールに振り回されない自信があるからだ。

 さらに、私は郊外に住んでいるが、平日は通勤時間短縮のため、都心の事務所で寝泊まりをしている。ただ、こうした私のやり方を一般の人が真似することは、容易ではないだろう。だから本書は、普通の人が、まず身につけるべき、マネーライフスタイルの基本を語った入門書ととらえれば、読みやすく、優れた作品と言えるだろう。

※週刊ポスト2018年5月18日号

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