「現行制度では、“原因不明の頭痛が続いている”など診療科の判断に迷う症状が出たとき、かかりつけ医は紹介状を書いて専門機関を紹介します。これまで行なわれてきたことと、実は総合診療医がやることに大差はないのです。
逆に、腹痛であっても普通の内科医なら自己処置で済ませるところ、専門医への紹介機能が強調される総合診療医に診てもらうとそこから循環器専門医に回されることになるなど、患者は余計な“ひと手間”を強いられるケースも出てくるでしょう。時間もカネも二重に取られるだけという結果になる可能性は大いにあります。
そもそも、わずか3年程度の研修で他の専門分野も網羅した知識や診断・治療の技術を習得することは不可能です」
上氏は、総合診療医が新設されたのには、裏の意図があるという。
「総合診療医が研修元の大病院へ患者を次々と送り込むケースが想定される。病院の新たな“おカネ儲け”のシステムが完成するだけではないのかとの疑念が消えません」
では、患者はどうすれば良いのか。
「手間を省くためにも、病気の原因がはっきりしている場合は、初めから専門医に診てもらった方が良いでしょう。『熱がある』『体がだるい』『足が痛い』など複数の症状が同時に出ている場合は総合診療医へかかることを検討しても良いかもしれませんが、信頼できるかかりつけ医をまず見つけておくことが大切です」(同前)
※週刊ポスト2018年5月25日号