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2018.05.19 16:00  マネーポストWEB

ライターの仕事獲得は東京が圧倒的に有利、残念だが仕方ない

ライターの仕事をするうえで、「やっぱり」東京にいるほうが有利なのか?(渋谷のスクランブル交差点)


 昨今個人も企業も役所もメディアもネットでいかにコンテンツを出すかが勝負となっているだけに、ライター・編集者という職業へのニーズも高まっている。今のネット時代、どこにいてもそうした仕事はできそうに思えるが、「東京にいた方が仕事獲得は格段に有利だ」と述べるのは、ネットニュースを中心にライター・編集者として活躍する中川淳一郎氏だ。同氏は2001年にライターになって以来、“営業”した経験は2回しかないという。その後、仕事も途切れたことはないというが、「自分の実力というわけではなく、『東京』という地の利があったことが大きい」と述べる。その真意は何か。

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 ライターの仕事が花盛りですね。クラウドソーシングでのライター募集なども盛んだし、「地方でも大好きな文章の仕事ができる時代だもんね♪」みたいな意見をネットで見ることもあります。

 しかし、クラウドソーシングのライターは安い仕事が多過ぎる。要は誰でもできる仕事なわけであり、単なるサイトのPVを少しでも上乗せするSEO対策用使い捨ての埋め草的文章の安いギャラのライターであり続けてしまいます。

 誰とも会うことなく仕事ができるのは魅力的ですが、やはり割の良い仕事というものは、よっぽどの文才があったり視点が面白過ぎる人や「先生様」になっている人を除き、実際に発注相手と顔を合わせる方が獲得しやすいと思います。

 となれば、企業の広報・宣伝部、メディアの編集部が集中した東京にいた方が圧倒的に有利です。私自身は2001年からライター・編集の仕事をしていますが、「気づいたら知り合いの知り合いから巡り巡って仕事がもらえる」状態が17年以上続いています。自分が優秀なライターかといえば全然そんなことはない。単に締め切りを守る、ギャラでうるさいことを言わない、程度のライターでしょう。

 それでも仕事がまるで途切れないのは、「東京在住」という地の利があるからではないでしょうか。もしも自分が東京以外の場所でライターをやっていたら……と考えることもありますが、多分今ここで文章を書いていることもないでしょうし、フリーランスの道を諦め再就職していたことでしょう。

 私は「宣伝会議」の「編集・ライター養成講座」の講師もやっておりますが、大阪校の授業はとにかく楽しい。毎度大阪の受講生の皆様のノリの良さと終わった後の飲み会が実に活気があって好きなのですが、毎回聞かれることがあります。それは、「やっぱり東京の方が仕事は獲得しやすいですか?」というものです。

「やっぱり」という接頭語がついているだけに、質問者もなんとなく認識はしているのでしょう。土地への愛着や家族・友人関係の事情等もあって関西圏に住んでいる方々ばかりなので、私も「そんなことはない」という回答を本当はしたいです。

 でも、回答は「東京の方が獲得しやすい。獲得のしやすさは8倍ぐらいかもしれない」というものになります。根拠は何か、といえば、結局何かを作るにあたり、発注主も発注相手と「仕事がやりやすい」ことを求めるのです。

 余人をもって代えがたいほどの人は別ですが、「俳優の〇〇のインタビュー、誰に頼もうかな……」みたいな話になった時、ほとんどの売れっ子俳優が東京を拠点としているだけに東京在住のライターに声がかかりやすくなります。人物インタビューに定評のある人物が大阪に住んでいるとすれば、往復の新幹線の切符代などで約3万円を編集部は負担しなくてはなりません。しかも、移動時間なども考えると心情的には本来のギャラに上乗せをしたくなる。

◆予算の前に「腕」は及ばない

 しかし、予算の都合上そんなことはできません。となれば、その大阪のライターより腕は劣るものの総予算を下げることができる東京(ないしは近郊)のライターに話が来ることになるのです。

 最近はネット系企業もメディアを多数立ち上げていますが、そうした企業が立地するのは渋谷や新宿が多いです。打ち合わせにしてもこうしたエリアでやることになるので、そこに参加する融通をつけやすいライターに話がいきます。

 また、ライターの仕事というものは「明日だったら〇〇社長が時間を作ることができるらしい! 誰か取材行けないか!?」みたいなことも案外多いです。そんな時に「オレ大丈夫です!」と言えるフットワークの軽さも「あいつは使い勝手がいい」みたいな感じで売れっ子のライターになる要因の一つだったりもします。

 日本の文字コンテンツの発火点が「東京偏重」ともいえる状況にある今、案外「場所」は重要です。ライターの速水建朗さんと同氏の著書『東京どこに住む? 住所格差と人生格差』をめぐり対談をしたことがありますが、同書には「どこに住むかで人生が変わる」といった記述がありました。

 私はここ17年、常に渋谷周辺を拠点としておりますが、速水さんは「それこそ仕事が続く理由じゃないの? 中川さんは一貫して渋谷周辺に居続け、渋谷の企業との関係を深めてきた。だから仕事がある」と私に指摘をしました。確かにそうだと思います。渋谷という文字コンテンツ需要がたくさんある街を拠点とすると、そうした企業との付き合いが深くなるのです。

 全国で発売されている雑誌などで「夏だ! カレー特集」なんてものをやった場合、東京の名店を24ページかけて紹介し、あとは「全国で発売してるからしょうがねぇな」とばかりに名古屋を1ページ、大阪・京都・神戸で2ページ、福岡で1ページおまけのように追加したりする。

 これを見ても分かるように、残念ながら「有利な拠点となる場所」というものは常に意識しておいた方がいい。それは漁業、農業、陶芸、金融、精密機器など業種別に存在するはずです。苦労少なくお金を稼ぐ人生を送るには、案外「土地」というものは有利な場所を選んだ方がいいでしょう。

 今回はあくまでも「ライター・編集者」の場合は東京が有利、という話です。ただ、「大阪の情報だったらオレしかいない!」とか「雪国の話だったらオレしかいない!」みたいな「地域No.1ライター」になれば、東京からの仕事も獲得することは可能でしょう。もちろん、これもなかなか競争は激しい……。

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