「与えられる役次第ですよ。その役がこの本でどういうポジションにいるか、その色づけを読んでどういう人間にしていくか考えます。それから、悪役なら良い役が相手にいる。そことの対比ですね。たとえば相手が倫理的だったら『そんな綺麗事で私を斬れますか』と持っていく。ただ、こっちがあまり上手く乗せて出ちゃうと相手が潰れますから。その辺は作品の質とかも考えながらいじくり回します。企画部門が何を思っているのか。もっと激しく、なのか、もっと明確に悪をやってほしいのか。そういうところを見てますね」

 最新作映画『孤狼の血』では、役所広司扮する刑事の前に立ちはだかるヤクザの親分を演じた。

「親分は家族の長です。家族の幸せを願い、どうすれば家族みんなが幸せになれるか。個人の欲望だけだったら、もっと破綻してるだろうと思うんです。

『アウトレイジ』の時もそうでしたが、泥臭さを大事にしました。みんなヤクザをカッコよくやっちゃうんですよ。でも、ヤクザって泥臭くて人間的なんだぜ、というのも誰かがやらないと。特に『孤狼の血』は八〇年代のヤクザですからね。企業戦士として大きな組織をもってこの世を生きていく。それを表現するために『仁義なき戦い』で金子信雄さんや織本順吉さんがやっていた『よく親分になれたな』というような、人間味あふれる泥臭さを持ち込んでみようと思いました。

 俺に老人役を求めているのが、最近になって分かってきました。そういう時は、老人たちのかつての騒いだ血とか、『諦めているけど、まだ怨念はあるぜ』とか、そういう心持ちを踏まえて代弁していきたいと思っています」

●かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社)など。本連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館)が発売中。

■撮影/藤岡雅樹

※週刊ポスト2018年5月25日号

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