ライフ

柳生十兵衛 「隻眼の剣豪」はウソ、ただし強いのは本当

 数々の小説や漫画、映画にテレビドラマ、ゲームなどでも人気キャラクターとしてよく取り上げられる剣豪・柳生十兵衛。片目に眼帯をした隻眼姿で描かれることが多いが、実際はどうだったのか。『ざんねんな日本史』(小学館新書)を上梓した歴史作家の島崎晋氏が、その知られざる顔を紹介する。

 * * *
 柳生一族といえばどうしても剣豪集団とか、幕府の裏の仕事の担い手というイメージがつきまとう。なかでも絶対欠かすことのできないのが、徳川将軍家の兵法師範を務めた柳生宗矩とその嫡男・柳生十兵衛のふたりだろう。

 十兵衛が剣の達人であったのは本当のことで、その実力は父をも凌ぐと言われた。元和五年(一六一九)、徳川家光の小姓として仕え始めたが、家光を怒らせたことから、寛永三年(一六二六)に職を辞した。それから一二年後に再出仕するまで、故郷である大和国柳生庄(現在の奈良県奈良市柳生町)で門弟の指導にあたっていたというのだが、表舞台から姿を消していたこの一二年間が後世の人びとの想像力を刺激した。

 家光から特命を受け、幕府の隠密として諸国を遍歴していたとの話が、いつの頃からか語られ始め、ついには講談の『柳生三代記』など、宗矩と十兵衛および十兵衛の弟又十郎を主人公にした剣豪物語が人気を博するようになった。

 そこに登場する十兵衛は隻眼と決まっている。まだ幼い頃、父宗矩が腕を試そうと不意に投げた石礫をよけそこねて隻眼になったというのだが、現実にはそのようなことはなく、十兵衛は両目ともしっかり見える、一分の隙もない剣豪だった。

 ただ強いだけではなく、ハンディを負いながら日本一の剣豪となった隻眼伝説は講談師が話を盛るために創作したと見てよい。

※SAPIO2018年5・6月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
3大会連続の五輪出場
【闘病を乗り越えてパリ五輪出場決定】池江璃花子、強くなるために決断した“母の支え”との別れ
女性セブン
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン