◆朝日スクープの影響
そんな折、飛び出したのが、3月2日の朝日新聞朝刊の一面スクープだったのである。前代未聞の公文書改ざんに財務省はもとより政府は青ざめた。
一方、大阪地検もそこから、東京の応援検事の異動延長を決め、いったん捜査を仕切り直した。その後、消された決裁文書から安倍夫人の関与がはっきりと浮かんだのは周知のとおりだ。おまけに財務省が国有地の値引きに関し、森友サイドへ口裏合わせの働きかけをしていた事実まで明るみに出た。
そうして下火になりかけた森友疑惑が、それどころか国民の目には現実の犯罪行為と映った。この間の取材の過程では、ある高検検事長経験者もこうつぶやいた。
「捜査の本丸は財務省の背任であり、そこに総理あるいは総理の周辺の共犯関係を立証しなければ、完結しない。その意味でハードルの高い捜査ではあります。しかし、少なくとも財務省の背任は固められたのではないでしょうか。大阪地検は一連の捜査で、文書の改ざんを見つけたが、それはあくまで副産物です。背任に手を染める過程でそこまでして総理周辺を庇おうとしたということを立件できるかどうか。不可能ではない気がしますけど」
仮に佐川を逮捕・起訴すれば、少なくとも公判の中で、なぜ犯行に手を染めたのか、誰の指示があったのか、それらを明らかにしなければならない。換言すれば、大阪地検はそれを避けたともいえる。