ところが、今の日本の政治家や官僚は、20世紀型秀才たちの集まりである。たとえば、日本銀行の黒田東彦総裁は「物価上昇率2%」という自分で設定した「答え」に固執した揚げ句、それを実現できる見込みがなくなって撤回する羽目になった。加計学園疑惑の柳瀬唯夫・元首相秘書官や、森友学園問題の佐川宣寿・前国税庁長官ら官僚も、トップである安倍晋三首相を忖度した「答え」が先にありきで、自ら墓穴を掘った。
自民党も国民民主党などの野党も、過去の延長線上に「答え」があるとしか考えていないから、21世紀のビジョンがまるで見えていない。20世紀は決まった答えに向かって程度とスピードを上げればよかったが、誰も答えがわからない21世紀は間違った答えに向かって程度とスピードを上げたら、壁にぶつかるのが早くなるだけだ。
ボート競技のエイトに喩えれば、20世紀は8人のオールの漕ぎ手が重要だったが、21世紀は1人のコックス(舵取り役)が重要なのである。コックス不在で迷走を続ける日本の政治は、まさに壁にぶつかる末路へと突き進んでいるのだ。政治だけでなく、経済も企業も地域社会も同じ運命にあることは言うまでもない。
※週刊ポスト2018年6月22日号