通勤中のサラリーマンの持ち物といえば鞄。雨の日なら、傘が加わる程度だろう。
「役に立つのは傘です。一般の方は、傘をチャンバラの刀のように振り回す場面をイメージするかもしれませんが、重要なのは、暴漢を倒すことではなく、暴漢と距離をとって逃げる隙をつくるための道具にすることです」(金井氏)
金井氏によれば、有効な傘の使い方は、振りかぶって“叩く”“打つ”のではなく、傘の先端で暴漢を“突く”というもの。もし、暴漢がナイフを振り回していたとしても、フェンシングのように腕を伸ばして突けば、暴漢が手に持つナイフを遠ざけることができる。
「鞄の使い方も大事です。人はパニックになると、大事なものが入った鞄を胸で抱きかかえてしまう傾向がありますが、これでは身を守れません。鞄でもリュックサックでも、とにかく、持ち手をしっかり握って、振り回すのが大事です。傘と同じく相手を打撃するためではなく、間をつくることが狙いです」(金井氏)
“防御”については「刃渡りの短いナイフのような凶器なら、週刊誌や漫画など厚めの雑誌は簡単には貫通しない」(同前)ため、今回「盾」のように使われて広く知られることとなった、新幹線の座面シートと同様の使い方が考えられるという。日本防災教育訓練センターのサニーカミヤ氏は、車両内に必ず設置されている消火器に着目する。
「東京メトロの場合は、各車両の端。JR西日本の在来線では特急のデッキ部分や、車椅子スペース、座席の下など設置場所は統一されていませんが、各車両に必ず置かれています。消火器の噴射は強力なので、やはり距離をとる方法となり得ます」