しかし、いまなお社内には現実を直視しない記者が少なくない。エリートが多い政治部記者は、「オックスフォードの調査で産経以下? 見ていないけど、どうせ朝日嫌いが多いネットの調査だろう」と他人事のようないい方をした。
さらに社の幹部たちは今も「朝日ブランド」に幻想を抱いている。かつて朝日の記者は「石を投げれば東大卒にあたる」といわれたが、誤報批判が高まった2014年春の新卒社員で東大卒はゼロだった。それでも、人事はまだ“天下の朝日”と思っているようだ。昨年、同社の内定を受けた有名国立大学生が辞退を申し入れたところ、人事部門の幹部からこう言われたという。
「『君は本当にウチを蹴るつもりなのか、どうしてだ』と執拗に聞かれました。会社の将来性に不安を感じたから内定辞退したのが本音ですが、人事の偉い方は辞退者が出るとは信じられないという口ぶりでした」と振り返る。
朝日は部数急落に直面した2016年に社員の平均年収を約160万円引き下げる賃金カットの方針を打ち出し、給与改革が進まなければ〈赤字数百億~1000億円規模〉という社外秘の説明資料を配付した。
「真っ先に取材経費が削られ、深夜帰宅のタクシー代も出ないから以前のように夜討ち朝駆けもままならない」(若手記者)
その一方で、経営幹部や編集幹部は安倍晋三・首相との「食事会」を持っているのだから、現場が政権追及のモチベーションを維持できるわけがない。朝日新聞OBのジャーナリスト・前川惠司氏が語る。