自民党は共謀罪の必要性について、常々、国際組織犯罪防止に関する国際連合条約(通称パレルモ条約)締結のためだと主張。条約締結の前提条件として、まず国内における共謀罪法の成立が不可欠だと訴えてきた。
奇しくも河野は、2005年10月から2006年9月までの第3次小泉純一郎改造内閣で法務副大臣を務め、パレルモ条約締結と共謀罪法の成立のために外務省と折衝を重ねてきた。そこで外務省は、条約締結の条件として懲役4年以上の676罪すべてを処罰対象にする共謀罪の整備という高いハードルを持ち出した。
真意は測りかねるが、外務省として問題の多い共謀罪の成立を阻む意図があったのかもしれない。が、実際には、パレルモ条約にそこまで幅広い処罰対象の基準はない。第2次安倍政権で成立を目指したこのとき、それを知った河野の怒りはすさまじかった。自民党法務部会で現場を目撃した関係者が打ち明ける。
「そのあとの本人のブログ(2017年3月4日付『ごまめの歯ぎしり』)では『676個はいくらなんでも多すぎないか、もっと対象となる罪を減らすべきではないかという議論をしました。しかし、外務省からの回答は、条約に入るためには、一つたりとも減らすことはできないでした。(中略)外務省も嘘をついていたわけではなく……』と柔らかく書いていました。しかし、嘘をつかれたという河野さんの恨みはそんなもんじゃありませんでした。まさに頭から役人を怒鳴りつけていました。以来、河野さんの外務官僚たちに対する不信は相当なものです」
結果、共謀罪法案は処罰対象を277に減らした上、テロ等準備罪を創設する組織的犯罪処罰法改正案(テロ等準備罪法)と国民の受け入れやすい名称に改められて国会に提出された。
そうして会期末ギリギリの昨年6月15日の参院本会議で成立。7月14日にはパレルモ条約を締結する運びとなった。