「こういう役はこれまでやったことがなかった。酔っている彼女になりきるためには理性を捨てることが必要でしたが、頭では考えずに、その激しい喜怒哀楽や心のありかを肉体で表現するのは非常に難しくて。あまりに奇矯な振る舞いが、作品からはみ出してしまわないかとも悩みました。
だけど、どんなに嫌悪しても断ち切れない親子の血縁関係や根底にある愛情は、物語のひとつの鍵となる重要なエッセンス。フライトナース・双葉の背景として役を全うしました。作品を観た方の心に残る存在になっていれば嬉しいです」
そう語るかたせの感情表現は豊かで、深刻な面持ちで想いを吐露したかと思いきや、冗談を言って豪快に笑う。生き生きと巡る表情に接するうちに、今度は艶やかな肌にまたしても目が釘付けになってしまった。
「私はお酒がとても強くて、どんなに飲んでもメイクをしたまま寝てしまう失敗がない。必ずメイクを落とすとか、毎日の基本的なお手入れの積み重ねだと思います。あとは新陳代謝。運動もしているし、1日に2回入浴するんです。クラシックや懐かしの洋楽を聴きながらゆっくりバスタブに浸かるの。毛穴からゴミを流してデトックスすると、ついでに心の澱も流れてすっきりしますよ」
劇中では、その美しい姿以上に鮮烈なかたせの演技が脳裏に深く刻まれるはずだ。
【プロフィール】かたせ・りの/1957年生まれ、東京都出身。『極道の妻たち』シリーズ(1986~1999年)、『肉体の門』(1988年)、『海難1890』(2015年)など数々の映画、ドラマで活躍。7月27日公開の映画『劇場版コード・ブルー ─ドクターヘリ緊急救命─』に雪村沙代役で出演する。邦楽の名門・西松流の名取で、己紗典咏(みさてんえい)。映画化が決定したフジテレビ系月9ドラマ『コンフィデンスマンJP』(今年4~6月放送)に出演し話題となった。
取材・文■渡部美也 撮影■槇野翔太
※週刊ポスト2018年8月3日号