「浅川案は、麻生さんと財務省内の主流である主計の合作だと思います。岡本次官が消えた時点で、どうすれば確実に岡本さんにつなぐことができるか、省内ではそこを考えたのでしょう」
とは財務省幹部(前出)の説明だ。仮に60歳の浅川で駄目なら次は58歳の星野に次官を任せ、そのあとに現在57歳の岡本でいい、という深謀遠慮が働いたともいう。が、浅川案も消え、岡本に戻った。なぜか。
巷間囁かれているように、岡本案に戻った背景としては、6月10日の新潟知事選における与党の勝利という要因もあるのだろう。東京電力柏崎刈羽原子力発電所の再稼働問題を争点にしたい立憲民主や共産などの野党5党推薦の池田千賀子に対し、自公は前海上保安庁次長の花角英世を擁立して対抗。争点をずらしながら花角が当選した。
これにより、来る9月の自民党総裁選における安倍3選の道筋がついたといわれる。と同時に、モリカケ問題の影響が薄まったと見た官邸は、岡本財務事務次官で問題なしと踏んだ。そうして2か月におよぶトップ人事の迷走の末、当初の岡本案に戻ったとされる。が、それだけでもない、と財務省の幹部官僚が続ける。
「岡本案に戻ったのは、菅(義偉)官房長官と麻生大臣とのさや当ての結果ではないでしょうか。浅川次官だと、官邸の菅さんたちにとってコントロールしづらい。菅さんたちは、それならいっそのこと、麻生さんのメンツを立てて星野案を引っ込める代わり、浅川案も白紙に戻してもらう。最終的な調整役を担ったのは、杉田和博官房副長官だと聞きましたが、事実上は菅さんと麻生さんの意向を汲んだ折衷案だったのでしょうね」