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外山滋比古氏が提言 子や孫に資産を残さぬほうが社会は活性化する

子や孫に資産を残すべきではないという外山滋比古氏

「高齢者こそ投資に挑戦すべき」――94歳にして本誌・週刊ポストでそう提言したのは、累計225万部の大ベストセラー『思考の整理学』(ちくま文庫)の著者である英文学者・外山滋比古氏(お茶の水女子大学名誉教授・94歳)だ。「ただ単に知識を溜め込むのではなく、自分の頭で思考すること」が何より重要だと考える外山氏は、近年の“相続対策ブーム”についても、形を変えた「思考停止」だと指摘する。

 2015年に改正相続税法が施行されて基礎控除が大きく削られ、相続税は“お金持ちだけが対象の税”ではなくなった。この課税強化と前後して、関連のセミナーは活況となり、「相続税対策」と銘打った特集が様々なメディアで組まれるようになった。その多くは、“どれだけ効率よく子や孫に資産を残すか”に主眼が置かれたものだ。そうした流れに、外山氏は疑問を呈す。

「なるべく多くのお金、不動産を子供や孫に残してやりたい……そういう“親心”は気持ちとしては分からないではありません。ただ、そろそろ皆さん、考え方を変えたほうがいいんじゃないでしょうか。僕は“子供世代のためには相続なんてないほうがいい”と考えています」(カギ括弧内は以下、外山氏)

 1983年に刊行された外山氏の著書『思考の整理学』は、思考力を備えた人間になることの重要性を説き、今なお東大生や京大生、エリートビジネスマンに広く読まれている。

 その外山氏は30歳から株投資を始め、それから60年以上が過ぎた今も約90銘柄を保有している。長期にわたる投資で殖やしたお金をどう残すか――その問いに対しても、外山氏は自分なりの“思考”を重ねていた。

「僕の親は、ほとんど何も財産を残さずに亡くなりました。リスクの大きい信用取引に手を出して、財産のほとんどを失っていたのです。だから、結婚式や住宅購入の時にも、親からお金を出してもらったこともありません。ただ、そういう環境があったからこそ、『自分で考え、自分の力で生きる』という姿勢を身につけることができたのではないかと思っています」

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