「よく僕の物語には結末がないと言われるのですが、そもそも終わりなんてあるのかと僕は思うんです。例えば昔ながらの食堂の外見が変わっても、精神さえ継承されていればそれでよしと、変化を受け入れてきたのが東京の人間。肝心なのは表面的なモノやコトの頁をめくって、見えない物語を読んでいけるかどうかだと思います。

 僕自身、感動的な大団円なんて書こうものなら恥ずかしくて逃げ出したくなる、良くも悪くも東京人気質です。僕は東京の西側で育ってきたし、スカイツリーも隅田川も出てこないささやかな話を書かせて下さい──って、まあ誰に断る義理もないんですけど(笑い)」

 誰かと誰かの時間がパラレルに交錯し、どこか諦めがちな気質をも飲み込んでしまうマットな夜の質感は、まさに東京ならではのもの。そんな街にも昼と夜は繰り返し訪れ、人々のちっぽけな意地が目に見えない地層を成す、現代の寓話である。

【プロフィール】よしだ・あつひろ/1962年東京生まれ。「坪内祐三さんと岸本佐知子さんは赤堤小の先輩、鴻巣友季子さんは後輩です」。パートナーの浩美氏と1998年よりクラフト・エヴィング商會としても活動し、2001年に講談社出版文化賞。著書に『つむじ風食堂の夜』『台所のラジオ』等。164cm、O型。「体重は最近測ってなくて。でも10代の頃、紅テントのお芝居を見に行ったら唐十郎さんが僕の上に落ちてきて、物語の作者の体重を感じる貴重な経験をしました!」。

構成■橋本紀子 撮影■三島正

※週刊ポスト2018年8月10日号

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