ドーナツ専門店として、もうひとつ気になるのが、アメリカから2006年に日本に上陸したクリスピー・クリーム・ドーナツの動向だ。
上陸後、常に行列のできドーナツ店として話題になり、日本中に店舗を広げていったが、近年は撤退する店も増えた。事実、2016年には戦略の見直しと称して店舗を大量に閉鎖、そして店舗改装を実施している。
店舗を訪れてみると、家族の構成人数が少ない日本で12個入りダズンボックスで販売していたり、数多く購入しないとおトクにならない価格設定があったりと、上陸当時はもてはやされた新奇性も武器にはならなかったというわけだ。
味も日本人には甘すぎる。同社のドーナツを食して、改めて日本人はドーナツに繊細な味わいを求めていることに気づかされた。
いずれにせよ、コンビニ売り場の縮小、ミスドの不振などを見る限り、ドーナツという商品の魅力は次第に薄れていることがうかがえる。健康志向の高まりにより、敬遠されがちな間食の代表になってしまった感もある。
だが、このまま日本人の消費者に完全に飽きられてしまうのかといえば、そんなことはないだろう。子供のおやつの定番、小腹が空いたときの“鉄板スイーツ”として長年好まれてきた歴史もある。
ドーナツは五感を刺激する素敵な食べ物である、と私は感じる。まず形や色合いを目で楽しみ、においを感じる。そして、口当たり、噛むときの音、日本人の繊細さにとても合う食べ物のひとつだ。