この作品には「不測の事態」という副題がついていました。つまり、ふたりでプライベートの旅行に行き、そこで偶然に撮られた写真という設定です。そこからは、リアルなエロティシズムを体現しようとする野心的なものを感じました。
この一冊がヘア解禁のきっかけになったとよくいわれますが、本当のきっかけになったのは、その次に出た宮沢りえさんの『Santa Fe』だと思います。宮沢さんの作品も、かわいくて素敵だなと思いましたが、私の受けたインパクトでは『water fruit』に太刀打ちできるものではありませんでした。樋口さんの女優としての力、篠山氏の写真家としての才能、ヘアヌード写真集第一号となったタイミング、すべてが絶妙に絡み合った奇跡的な一冊だと思います。
【プロフィール】うえしま・けいじ/1947年、東京都生まれ。東京大学文学部宗教学科を卒業後、シカゴ大学大学院に留学。関西大学教授などを歴任した後、2015年より京都造形芸術大学教授に就任。40年以上、ネパールやインドネシアなどの宗教人類学調査を続けている。
◆取材・文/小野雅彦
※週刊ポスト2018年8月17・24日号